P9前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
ごとく尓うせ多り又 蔵 ハうれしさ能余 り是 尓謝
あま これ しや
ごとくにうせたりまたぞうはうれしさのあまりこれにしゃ
せんとさゝえ尓酒 を入れ天かの谷 尓い多る尓山
さけ い 多尓 や春
せんとささえにさけをいれてかのたににいたるにやま
男 二 人迄 出天是 越のミ大 い尓悦 天去 しと
おとこふ多り これ 於本 よろこび さり
おとこふたりまででてこれをのみおおいによろこびてさりしと
楚゛此 事 古老 のいひ伝 へ天今 尓彼 の地尓天
こらう つ多 いま 可の ち
ぞ このこところうのいいつたえていまにかののちにて
ハ志る人 多 し合 壁 故事といへる書 尓木 客
ひと於本 可゛うへきこじ しよ もく可く
はしるひとおおしが うへきこじといえるしょにぼっかく
(大意)
ようにいなくなってしまった。又蔵はうれしさのあまり、このことの礼を
しようと、竹筒に酒を入れてあの谷へ行ってみると
山男が二人もあらわれて、これを呑み大変に悦んで去っていった
という。この話は古老が言い伝えて今も彼の地で
は知っている人も多い。「合壁故事(ごうへきこじ)」という書に「木客(墨客(ぼっかく))」
(補足)
「うれしさ能」、変体仮名「能」(の)のかたちは、「能わず」(あたわず)として使われるときのくずし字とはことなっています。
「さゝえ」は竹筒のこと。
「かの谷尓」、平仮名の「か」が堂々としてみえます。
「二人迄」、「迄」が変体仮名に見えますが、「迄」のくずし字。
「此事」、ここの「事」は「古」+「又」の異体字になっています。
「木客」は辞書になく、「墨客」(ぼっかく)のこと。
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