2022年2月20日日曜日

桃山人夜話巻五 その15

P9前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ごとく尓うせ多り又 蔵 ハうれしさ能余 り是 尓謝

                             あま これ しや

ごとくにうせたりまたぞうはうれしさのあまりこれにしゃ


せんとさゝえ尓酒 を入れ天かの谷 尓い多る尓山

       さけ い    多尓     や春

せんとささえにさけをいれてかのたににいたるにやま


男  二 人迄 出天是 越のミ大 い尓悦   天去 しと

おとこふ多り    これ   於本  よろこび さり

おとこふたりまででてこれをのみおおいによろこびてさりしと


楚゛此 事 古老 のいひ伝 へ天今 尓彼 の地尓天

      こらう   つ多  いま 可の ち

ぞ このこところうのいいつたえていまにかののちにて


ハ志る人 多 し合  壁 故事といへる書 尓木 客

   ひと於本 可゛うへきこじ    しよ もく可く

はしるひとおおしが うへきこじといえるしょにぼっかく


(大意)

ようにいなくなってしまった。又蔵はうれしさのあまり、このことの礼を

しようと、竹筒に酒を入れてあの谷へ行ってみると

山男が二人もあらわれて、これを呑み大変に悦んで去っていった

という。この話は古老が言い伝えて今も彼の地で

は知っている人も多い。「合壁故事(ごうへきこじ)」という書に「木客(墨客(ぼっかく))」


(補足)

「うれしさ能」、変体仮名「能」(の)のかたちは、「能わず」(あたわず)として使われるときのくずし字とはことなっています。

「さゝえ」は竹筒のこと。

「かの谷尓」、平仮名の「か」が堂々としてみえます。

「二人迄」、「迄」が変体仮名に見えますが、「迄」のくずし字。

「此事」、ここの「事」は「古」+「又」の異体字になっています。

「木客」は辞書になく、「墨客」(ぼっかく)のこと。

 

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