P13前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
第 丗 八 恙 虫
多゛以さん志゛う者ちつゝ可゛むし
だ いさんじゅうはちつつが むし
斉 明 天 皇 の御 時 石 見八上 の山 奥 尓徒ゝ可゛といへる
さ以め以てん王う 於んときい王ミや可゛ミ や満をく
さいめんてんのうのおんときいわみやが みのやまおくにつつが といえる
むし有 天夜ハ人 家尓入 天人 の禰むりをう可ゞひ生
阿り よ じん可 いり ひと せい
むしありてよはじんかにいりてひとのねむりをうかがいせい
血 越春ひ天殺 さるゝ毛の多 し博 士某 尓仰 附 ら
个つ ころ 於本 者可せ曽れ あふせつけ
けつをすいてころさるるものおおしはかせそれにおうせつけら
連此 虫 越封 じさせ給 ひし与り民 間 尓其 愁
このむし ふう 多満 ミん可ん 曽のうれい
れこのむしをふうじさせたまいしよりみんかんにそのうれい
(大意)
第三十八恙虫
斉明天皇の御時、石見八上の山奥に「つつが」という
虫がいた。夜になると人家に入り、人の眠りをうかがい
生き血を吸われて殺されるものが多かった。(天皇が)某博士に
仰せ付けられて、この虫を退治させなされてから、世間ではその心配は
(なくなった。)
(補足)
斉明天皇在位は655〜661年なのでとても古い、神話とでも呼べるようなお話。
「徒ゝ可゛」、変体仮名「徒」(つ)は変体仮名「津」(つ)とまぎらわしい。
「禰むりを」、変体仮名「袮or禰」(ね)は判別しやすい。「を」は「と」ではありません。
「殺さるゝ」、ここの「る」は変体仮名「留」(る)ではなく平仮名。
「博士某」、「それ、その」は「其」(左下にあります)、「なにがし、ぼう」は「某」。似ているので振り仮名を間違えたのかも。
「仰附ら連」、変体仮名「連」(れ)の形がちょっと違って見えますけど「れ」。「仰」のくずし字は旁のふたつの部品が上下になる形が多い。
「給ひし」、「給」の「合」のくずし字が「谷」のくずし字に見えます。
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