P.1
P.1 上段
(読み)
御ぞんじの
ごぞんじの
さうしの者ん
そうしのはん
もと栄 邑 堂 の
もとえいゆうどうの
あるじとしゞ
あるじとしどし
のさうしミ奈
のそうしみな
かハり多る
かわりたる
志由こうも
しゅこうも
奈しことしハ
なしことしは
いち者゛んあてる
いちば んあてる
つもり尓て
つもりにて
いろゝ とくふう
いろいろとくふう
を奈しまづ
をなしまず
さうしのさく
そうしのさく
しやれいの
しゃれいの
奈まけものゝ
なまけものの
十返舎一九
じっぺんしゃいっく
をよびよセ
をよびよせ
奈尓可奈し尓
なにかなしに
さけをい多゛し
さけをいだ し
そのさけの中 へ
そのさけのなかへ
さくのよく
さくのよく
で起るめう
できるみょう
やくをいれて
やくをいれて
のまセ个る
のませける
そのく春りと
そのくすりと
いふハ
いうは
干 鰯(ほし可)馬糞(者゛ふん)
ほしか ばふん
(大意)
御存知の草紙の版元栄邑堂の主、ここ数年出版する草紙は
みなかわりばえもなく特段の趣向もないとおもった。
今年はひとつ当てるつもりでいろいろ工夫をしようと、
まず、草紙の作者、例の怠け者の十返舎一九を呼び寄せた。
なんとなくまあ一献と酒をすすめた。
その酒の中へ作のよくできる妙薬を飲ませた。
その薬というのは、干鰯・馬糞
(補足)
「御ぞんじの」とくると、豆本の出だし「昔々お子様方御存知の」をすぐにおもいうかべてしまいます。
「も」の形はだいたい2つあって、「者ん(も)と」と7行目の「志由こう(も)」です。
変体仮名「者」は平仮名「む」の下側が、だらりと流れる感じ。
「あるじ」、「あ」は「お」に「、」がない形になります。現在の「あ」とは印象がちがいます。このあとにでてくる「あ」もみな同じ形。
「ミ奈」、平仮名「み」はほとんどがカタカナ「ミ」です。
「尓」(に)の形はこの本では筆記体の「y」。
「セ」、「ミ」と同様に、平仮名「せ」はめったに目にしません。
「で起る」、「起」が「記」や「紀」のようにみえますが、「き」の変体仮名「起」です。
「めうやく」(みょうやく)、「や」には見えませんね。
「のまセ个る」、「个」が簡略化されてます。ほかのところでは「け」ですが、ここだけ「个」。
「く春り」(くすり)、「す」の変体仮名「春」。「す」+「て」のような形。
「干鰯・馬糞」、丁寧な楷書です。
干鰯は現在でも生産されています。風通しの良い丘陵の浜近くに行くと日干しにされ、匂いでわかります。農作物の貴重な肥料です。
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