2020年6月17日水曜日

的中地本問屋 その4




P.1



P.1 上段

(読み)
御ぞんじの
ごぞんじの

さうしの者ん
そうしのはん

もと栄 邑 堂 の
もとえいゆうどうの

あるじとしゞ
あるじとしどし

のさうしミ奈
のそうしみな

かハり多る
かわりたる

志由こうも
しゅこうも

奈しことしハ
なしことしは

いち者゛んあてる
いちば んあてる

つもり尓て
つもりにて

いろゝ とくふう
いろいろとくふう

を奈しまづ
をなしまず

さうしのさく
そうしのさく

しやれいの
しゃれいの

奈まけものゝ
なまけものの

十返舎一九
じっぺんしゃいっく

をよびよセ
をよびよせ

奈尓可奈し尓
なにかなしに

さけをい多゛し
さけをいだ し

そのさけの中 へ
そのさけのなかへ

さくのよく
さくのよく

で起るめう
できるみょう

やくをいれて
やくをいれて

のまセ个る
のませける

そのく春りと
そのくすりと

いふハ
いうは

干 鰯(ほし可)馬糞(者゛ふん)
ほしか     ばふん


(大意)
御存知の草紙の版元栄邑堂の主、ここ数年出版する草紙は
みなかわりばえもなく特段の趣向もないとおもった。
今年はひとつ当てるつもりでいろいろ工夫をしようと、
まず、草紙の作者、例の怠け者の十返舎一九を呼び寄せた。
なんとなくまあ一献と酒をすすめた。
その酒の中へ作のよくできる妙薬を飲ませた。
その薬というのは、干鰯・馬糞


(補足)
「御ぞんじの」とくると、豆本の出だし「昔々お子様方御存知の」をすぐにおもいうかべてしまいます。

「も」の形はだいたい2つあって、「者ん(も)と」と7行目の「志由こう(も)」です。
変体仮名「者」は平仮名「む」の下側が、だらりと流れる感じ。

「あるじ」、「あ」は「お」に「、」がない形になります。現在の「あ」とは印象がちがいます。このあとにでてくる「あ」もみな同じ形。

「ミ奈」、平仮名「み」はほとんどがカタカナ「ミ」です。

「尓」(に)の形はこの本では筆記体の「y」。

「セ」、「ミ」と同様に、平仮名「せ」はめったに目にしません。

「で起る」、「起」が「記」や「紀」のようにみえますが、「き」の変体仮名「起」です。

「めうやく」(みょうやく)、「や」には見えませんね。

「のまセ个る」、「个」が簡略化されてます。ほかのところでは「け」ですが、ここだけ「个」。

「く春り」(くすり)、「す」の変体仮名「春」。「す」+「て」のような形。

「干鰯・馬糞」、丁寧な楷書です。
干鰯は現在でも生産されています。風通しの良い丘陵の浜近くに行くと日干しにされ、匂いでわかります。農作物の貴重な肥料です。


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