P.8
(読み)
[つゝき]
ゑいとうゝ と
えいといえいとうと
大 入 大 者んじやう
おおいりだいはんじょう
又 ハ可ぞく可多
またはかぞくかた
尓もめさ連
にもめされ
よせ起奈ど
よせきなど
尓いで春
にいです
こし
こし
のひま
のひま
も奈し
もなし
大 者゛
おおば
やり
やり
由へ
ゆえ
やしハ
やしは
(大意)
「えいとうえいとう」と大入り大繁盛しました。
また(あるとき)は華族方(の家)にも呼ばれ(たり)、
寄席などに出て、少しの暇もなく大流行しました。
そのため香具師は
(補足)
「ゑいとうえいとう」、最初、香具師が舞台で文福茶釜を囃し立てる掛け声かと思いました。
それでも意味が通じないことはありません。
いちおう辞書で調べるとあるところにはあるものです。
次のようにのっていました。
『興行などで,見物人が大勢つめかけるさま。また,劇場などで,大入りを願う口上の言葉。「東西東西,―,―」「四季に絶せぬ見物は―,―又―」〈洒落本当世気とり草〉〔「永当」とも書く〕』
賑やかに沢山の人が押し寄せている雰囲気を表しているとして、そのまま言葉に記さなくてもよいのですが、口上としてもおかしくはないので、大意のようにしました。
この「ゑ」は、めったにでてきません。いくつか豆本を見てきましたが、はじめてかもしれません。
「う」とくりかえしの「く」が重なってわかりずらい。
「可ぞく可多尓もめさ連」、いったん読めてしまうとなんでもないのですが、初見だと悩みます。
「可ぞく」がすぐには「華族」とピンときません。「家族」になってしまう。
「め」がかすれてしまって「や」のようにみえますし、ここの「連」もなやみます。
「よせ起奈ど尓いで」、「寄席」、現在では「よせ」とフリガナをしますが、そのまま「よせき」なんですね。「よ」がその両脇の「尓」とにていて、なやみます。「い」が「ハ」でなやむ。
「春こしのひま」、「こ」が読めません。「こ」の変体仮名は「古」で「十」+「い」のような形ですが、上半分が欠けてしまったのでしょうか。
「由へ」、「由」は左上から右回りに丸を描いて、元の位置に戻ったら右下中心に向かってゴニョゴニョと書きます。ここのはその途中右上でちょっと切れてしまったようです。
香具師は舞台で文福茶釜に掛け声をかけ、舞台かぶりつきの席では父母子どもの家族が食い入るように見ています。子どもの青ゾリがかわゆい。
香具師の衣装がなかなか。派手なのは紅白裃だけで、渋萌黄色の着物に内側は渋青、しかし両袖口からちらっと赤が見えています。
おしゃれです。
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