2020年4月21日火曜日

豆本 きつねの嫁入 その3




 P.2上段

(読み)
飛や こや
ひゃっこや

志ろべいと
しろべいと

いふものゝ
いうものの

武春め尓
むすめに

お多まと
おたまと

いふへつぴ
いうべっぴ

んとしハ
んとしは

ニハの者な
にはちのはな

ざ可りいつし可□
ざかりいつしか□



(大意)
白狐屋(ひゃっこや)白兵衛(しろべえ)という者の
娘にお玉という別嬪(べっぴん)がいました。
年は二八の花盛り。いつしか


(補足)
 スラスラ読めるかとおもうと、つっかえつっかえ確かめながらでないと
先にすすめないところがたくさん出てきます。

本当に当時(この豆本は明治18年刊)、若年層の方々は誰にも頼ることなく
読むことができたのでしょうか。
それとも、そばの兄弟や大人に「ここはなんてよむの」ときき、楽しんだのでしょうか。

「飛やこや」、出だしからはたと目が点になってしまいました。
出だしは「ひ」に似ているけど、一画目が違います。調べると変体仮名「飛」でした。
読めたとしても「ひやこや」って何だ?
次の行に「志ろべい」(しろべい)と続くので、どうやら人の名前?と理解して、
ようやく「白狐屋白兵衛」だろうとたどりついた次第。

次の難題は4行目。
一文字目が一行目の「ひ」に似ているけど、どうも違う。
二文字目は 「十」+「て」 のようなので「す」(春)でしょう。
続けて読むと「ひすめに」となって変です。
「む」ではないかと推理して、変体仮名を調べるとありました、「武」です。

で、次は6行目、7行目。
「いふへつぴん」、「いふ」は「言う」として、「へつぴん」って何だ?
「ひ」に半濁点の○がついて「pi」の発音になりますが、半濁点は珍しい。
「へ」の濁点「゛」が省略されることはよくあるので、
これも次の行に読みすすめてみると「別嬪」(べっぴん)だろうことが
やっとわかったつもりになりました。

「としハ二八の者なざ可り」、「とし」がそれほどかすれているわけでもないのに、読みづらい。
この部分は、落語などに出てくる決まり文句だな。「二」✕「八」で十六歳ってわけだ。
落語じゃ二八蕎麦の方が頻繁に出てきます。
これはうどん粉そば粉の割合ですが、当時のかけそばの値段十六文にひっかけてそう。

行末の□は、同じ頁内で文章が飛ぶときの行き先を示す記号で○☓△などいろいろあります。

 機嫌よく娘の縁談についてお話の様子ですが、たった九行を読むのにヒーヒーでした。


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