2020年4月14日火曜日

豆本 文福茶釜全 その11




 P.9

(読み)
お本よろこひ
おおよろこび

大 可年もふ
おおかねもう

けふく
けふく

ゝ と○
ふくと

○奈りし可バ
 なりしかば

やしも
やしも

も者や
もはや

多連りと
たれりと

おもひ[次へ]
おもい


(大意)
大いに喜び、大もうけして大金持ちになりました。
そして香具師はもはや十分に儲けたとおもい、


(補足)
同じ「大」(おお)でも、「お本よろこひ」だったり、そのまま「大可年もふけ」としたり、いろいろです。
「年」(ね)の変体仮名は○にちかい。右上から右回りにクルッと丸をかき、戻ったところで小さな横棒です。
「ふ」は「不」ですが小さくてわかりずらい。しかし、次の行の「ふ」は現在のものと同じです。

「ふくゝ」(福福)。

「やしもも者や」、おなじ「や」でもずいぶんと形が異なってます。

「おもひ」、ここの「も」はそのまえのふたつの「も」と筆の運びが最後のところが逆になってます。


P8P9見開き。



 文福茶釜の綱渡り。右手に「大入」扇子を、左手に傘。不安定さはなく上手な綱渡りです。
傘は日本では独特のおしゃれの品物として、昔より作られてきました。和の美には不可欠なものとして不動の装飾品となってます。
文福茶釜のたぬきは綱渡り踏み外して落ちたときのパラシュート代わりにも使ったのでしょう。

 絵の焦点はもちろん文福茶釜。香具師も親子3人も食い入るように視線そちらに向けています。
舞台の板はりが、ちょっと乱暴に描いているようにもみえますが、そうではありません。
使い込んだ板張りの感じを、画工の技工を感じさせぬようなにげなく描いています。
単純に板の色として渋茶色に黒線を引くのではなく、薄肌色を交互に幅を不規則に入れることにより木目感を出し、舞台の広がりを表現しています。



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