2020年4月12日日曜日

豆本 文福茶釜全 その9




 P.7

(読み)
さつそくきんじよの
さっそくきんじょの

やし尓そのちや可゛満を
やしにそのちゃが まを

うり者らひし可゛
うりはらいしが

やしハそのちや
やしはそのちゃ

可゛満をミせもの
が まをみせもの

尓い多゛しつ奈
にいだ しつな

王多り可る王さ
わたりかるわざ

さ満ゝ のけい
さまざまのげい

とうを奈し个る
とうをなしける

ゆへとうけいぢ う
ゆえときょうじゅう

の大 ひよう者ん
のだいひょうばん

と奈りまい日
となりまいにち

ゝ   [次へ]
まいにち


(大意)
早速(さっそく)、近所の香具師(やし)にその茶釜を
売り払ってしまいました。
香具師はその茶釜を見世物に出し、綱渡りや軽業など様々の芸当をするので
東京中の大評判となり、毎日毎日、


(補足)
 こんなに楽しい茶釜なら、茶の湯はせずとも、家にほしい。
しっぽフリフリ、なんか酔っ払っているような、あっいやさぁ〜こらさっと聞こえてきそう。
手で頭の蓋をとり、カチャカチャならし賑やかそう。
尻尾ですが、拡大してみるとフサフサ感がでるようにか、細かく描いています。

 左の大きな籠の底は網目に編んでなく、頑丈にするためにグルグル巻いてこしらえてあるところが心憎い。

「きんじよ」、「じ」が「ト」に見えます。「よ」は変体仮名「与」。
「やし」、版木なのですが「や」の筆の運びが「ゆ」と同じような感じに見えてしまうので「ゆ」とまちがえそうです。「や」は「也」、「ゆ」は「由」。

4行目「ちや」の「ち」が「ら」にみえます。その2行右の「ち」と比べても・・・

「可る王さ」、「可る」がややわかりにくいか。

「けいとう」(芸当)、「とうけいぢう」(東京中)、「大ひよう者ん」(大評判)。


 P6P7見開き。



 行灯の明かりのところは渋黄色になっていて、ゆらめく灯りの感じがよいです。
また、布団の左端だけが左の絵にほんの少しだけ描かれていますが、細かい芸当です。


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