P16後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
旧 く奈りぬれバ同 じ太 平 広 記尓旧 鼡人 の娘 と契
ふる 於奈 多以へいくハうき きう 曽ひと む春め ちぎり
ふるくなりぬればおなじたいへいこう きにきゅうそひとのむすめとちぎり
多りと有 鼡 ハ千 年 をへて白 く奈るとあれども近 来 の
阿り袮づミ せん袮ん しろ きんら以
たりとありねずみはせんねんをへてしろくなるとあれどもきんらいの
鼡 ハ生 れ奈可゛ら尓白 し当 世 ハ何 ごとも早 手巡 し奈り
袮づミ う満 しろ 多うせ以 奈尓 者やでまハ
ねずみはうまれなが らにしろしとうせいはなにごともはやでまわしなり
出羽尓天猫 の子旧 鼡 の乳越呑 天育 しこと阿り
で王 袮こ こふるき袮づミ ち のミ 曽多゛ち
でわにてねこのこふるきねずみのちをのみてそだ ちしことあり
(大意)
年をとってしまえば同じようなものなのである。『太平広記』に「旧鼠、人の娘と契
りたり」とある。鼠は千年を経て白くなるとあるが、近来の
鼠は生まれながらに白い。今は何事も早め早めに手をまわす世になってしまった。
出羽の国で猫の子が年とった鼠の乳を呑み育ったことがあった。
(補足)
「同じ」、「へのへの茂平爺」とおなじ「じ」で、この「同じ」もじっと見ていると四角四面の顔に見えぬこともない。2行後の「白し」も、その次の行の「育し」も大きい「し」。
「旧鼡」、振り仮名は「きう曽」ではなく「ふるき袮づミ」。
「きゅうそ」というと、最初に頭に浮かぶのは「窮鼠猫を噛む」です。ここでは猫も鼠も歳をとればそれほどの違いはなく、鼠が猫の子に乳を与えても別に不思議はないだろうというぬくもりあふれるお話。人の心が勝手に生き物を区別して犬猿にしているということなんでしょう。
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