2021年10月7日木曜日

桃山人夜話巻二 その10

P6 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

山 地々

やまちゝ

やまちち


このもの人 の寐

    ひと ね

このものひとのね


息 を春いあとに

いき 

いきをすいあとに


て其 人 の胸 を

 そのひと むね

てそのひとのむねを


多ゝくと飛としく

たたくとひとしく


死春ると那りされども

しするとなりされども


あい袮まの人 目を

     ひとめ

あいねまのひとめを


さませ者゛可へりて命

         いのち

さませば かえりていのち


奈可゛しといふ

なが しという


奥 州  にお本

於うしう

おうしゅうにおお


く居るよし

 い

くいるよし


いひつ多ふ

いいつたう


(大意)

山地々

このものは人の寝息

を吸い、そのあとで

その人の胸を

たたくやいなや

死んでしまうという。しかし

同室で寝ている人が目を

覚ましてしまうと、逆に命を

ながらえるという。

奥州におお

くいるとのことが

言い伝えられている。

(補足)

 なんとも珍妙な姿の「もの」です。手の指は3本、足の指はふたまたに分かれ、猿とも河童とも見えますが。このあとの本文にその謂われがでてきます。旅道中の旅籠の夜、吸われている若いお武家さんのような人の寝顔がなんとも気持ちよさそう。行灯が精緻に描かれています。

「あとに」、平仮名「に」の頻出頻度は平仮名「み」と同じくらいに少ない。

平仮名「く」の上に小さな「丶」があるようにみえます。変体仮名「久」(く)は「丶」+「く」のようなかたちなので、平仮名「く」との区別が難しいです。また変体仮名「天」(て)にもにています。

変体仮名「飛」(ひ)は特徴的なので覚えやすい。

「奥州」、「州」が「刀」三つで下の二つがくずれた形。

 

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