2021年10月4日月曜日

桃山人夜話巻二 その7

P4前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ハのけさ満尓大  地へ奈げら連所  ハ其 儘 野原と

      多゛以ぢ     ところ そのまゝの者ら

はのけさまにだ いちへなげられところはそのままのはら


奈り天彼 家 登覚  しきハ阿多り尓ミえ須゛婦し

   可のいゑ 於本゛        

なりてかのいえとおぼ しきはあたりにみえず ふし


ぎのこと尓思 ひ天同 じ里 の人 尓語 る尓豆 多゛ぬ

     於も  於奈 さと ひと か多  まめ

ぎのことにおもいておなじさとのひとにかたるにまめだ ぬ


き能所 為奈りといへりされども附 合 三 十  六 句の

  しよゐ          つ希あひさん志゛うろツく

きのしょいなりといえりされどもつけあいさんじゅうろつくの


こと越希有尓思 ひ天其 侭 尓志るし狸  歌仙 と

   けう 於も  そのまゝ    多ぬき可せん

ことをけうにおもいてそのままにしるしたぬきかせんと


(大意)

(魯山)はもんどりうって大地へ投げ出され、(八畳間の)ところはそのまま野原と

なり、かの家とおぼしきものはあたりに見あたらなかった。不思議な

ことだとおもって、同じ里の人に(このことを)語ったところ、それは豆狸

の仕業であると言った。しかし(連句)三十六句の附合が残っている

ことを珍しいとおもってそのままに記し、狸歌仙と


(補足)

「野原」、「野」のくずし字は「那」+「土」のようなかたち。

「こと」、これでひと文字で合字です。何箇所かこのあとにでてきます。

変体仮名「能」(の)は英語の発音記号「æ」に似ています。

「附合」の振り仮名がよくわからないので拡大してたしかめました。ここの「け」は変体仮名「希」(け)でしょうか。「あ」は変体仮名「安」(あ)のようにもみえますが、やはりよくわかりませんでした。

「三十六句」、振り仮名「ろつく」の「つ」は片仮名「ツ」にもみえますし、変体仮名「川」(つ)のようにもみえます。

 お釈迦様の手のひらならぬ狸の陰嚢(きんたま)座敷も大風呂敷をひろげたはなしで笑えます。連句のやり取りがあるので、お下品にはかろうじてならなそうなのがまぁ救い。

 

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