P12後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
へる大 太ハ五六 里づゝの嶋 越片 手尓持 冨士のい多ゞ
多゛い多 ごろくり し満 可多て もちふじ
えるだ いたはごろくりずつのしまをかたてにもちふじのいただ
き尓与り可ゝ里天海 を呑 と云 伝 へり白 隠 禅 師可゛
うミ のむ いひつ多 者くゐんぜんし
きによりかかりてうみをのむといいつたえりはくいんぜんじが
大 太郎法 師の賛 尓「うミ越呑む茶 のこ可雪 のふじの山 これ
だい多ら本゛つち さん の ちや ゆき や満
だいたらぼ っちのさんに「うみをのむちゃのこかゆきのふじのやまこれ
らの説 与り出 多り唐 土尓も莊 子と天虚の本 家有
せつ いで もろこし さうじ こ 本んけあり
らのせつよりいでたりもろこしにもそうじとてこのほんけあり
(大意)
大太(だいた)は五六里ぐらいの島を片手に持ち、富士山の頂
きによりかかって、海の水を飲むと言い伝えれている。白隠禅師が
大太郎法師(だいたらぼっち)の絵の賛に「うみを呑む茶のこか
雪のふじの山」とあるのは、これらの説より出たものである。唐土
にも「莊子」という本にこの作り話のもとのになるものがのっている。
(補足)
「うみを呑む茶のこか雪のふじの山」、大太郎法師がうみを呑んでいる姿はまるでふじの山を茶うけにしているようだ。「茶の子」は茶菓子、茶うけ。これらはおなかにたまらないので、物事の容易なこと。そこから「お茶の子さいさい」の文句がでた。
「大太」、振り仮名は「だ」と変体仮名ではありませんがでもすぐ次は変体仮名「多」(た)。
「づゝ」、平仮名の「つ」としましたが、よくわかりません。ここの「ずつ」は同じ割合で分配するの意味ではなく、三枚ぐらいずつ分けるのように、「およそ」の意。
「嶋」、偏の「山」が冠になってます。漢字の部品があちらこちらにいどうすることはよく見られます。次の「片手」の「片」も同様で、一画の目「ノ」が偏のようになってます。
「持」、「村」ではありません。「寺」のくずし字はひらがな「る」のような形。
「与り可ゝ里天」、一語一語がどこで切れているか確認するのによい箇所。
「大太郎法師」(ダイダラボッチ)、日本昔ばなしにも出てくる日本全国にある巨人伝説。
「虚の」(こ)の、指示代名詞「この」としても意味は通じますが、ここではウソのでは言い過ぎなので作り話。
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