2021年10月29日金曜日

桃山人夜話巻二 その32

P21後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

頭  王れ天血おび多ゞしく出 し可゛疵 口 さら尓癒 るこ

可しら   ち      いで   きづぐち   い由

かしらわれてちおびただしくいでしが きずぐちさらにいゆるこ


登奈く唇   の可多ちを奈し天骨 ハ出 天歯の如 く尓

   くちびる        本袮 いで 者 ごと

となくくちびるのかたちをなしてほねはいでてはのごとくに


奈り肉 つき上  りて舌 尓類 せり時刻 越とりてい多

  尓く  阿可゛  志多 る以  じこく 

なりにくつきあが りてしたにるいせりじこくをとりていた


むこと苦痛 多え可゛多く食  を入るゝ時 ハい多ミを

   くつう      志よく い  とき

むことくつうたえが たくしょくをいるるときはいたみを


和 らげ多り依 天両  口 阿る可゛ごとし後 尓ハ毛の云

や王    よつ 里やうくち       のち    いふ

わわらげたりよってりょうくちあるが ごとしのちにはものいう


(大意)

頭が割れて血がおびただしく出たが、傷口は少しも癒えるこ

となく、唇の形になってきて、骨が出て歯のように

なり、肉が盛り上がってきて舌のようなものになった。時によっては

痛み、その苦痛は耐え難く、(口のようなところへ)食べ物を入れるときは痛みを

和らげることができた。よって(頭の前後の)両方に口があるようであった。後には

(ひそひそという話し声)


(補足)

「時刻越とりて」、「と」の一画目が「ー」になっていてすぐにはわかりませんでした。この部分の意味も辞書を調べて悩みました。辞書に「 (「時にとって」「時にとりて」の形で)場合によって。時によって。「人,木石にあらねば,時に―・りて,物に感ずる事なきにあらず」〈徒然草•41〉」とあったのでこれを採用。

「上りて」、こちらの「上」のほうがよほど平仮名「と」にみえます。

 二口は生まれながらにあったのではなく、このような子どもいじめ殺しがあって、その後の事故によってできた傷口が原因でした。現代でもありそうなことです。

 

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