P8後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
幽 霊 の可い志きとハ志多る奈るべしされバ松 ハ猛 き
ゆう連以 まつ 多け
ゆうれいのかいしきとはしたるなるべしさればまつはたけき
可多ち有 天武者 のうしろ多゛てと奈り柳 ハやさし
阿り むしや や奈ぎ
かたちありてむしゃのうしろだ てとなりやなぎはやさし
き姿 有 天女 の粧 ひ尓類 せり今 や其 風 姿の
春可゛多ありてをん奈 よ曽於 るい いま 曽のふうし
きすが たありておんなのよそおいにるいせりいまやそのふうしの
行 王多りて辻 君 迄 も此 樹のもと尓立 ことゝハ成 ぬ
ゆき つじぎミまで このき 多つ 奈り
ゆきわたりてつじぎみまでもこのきのもとにたつこととはなりぬ
(大意)
幽霊の受け皿(かいしき)としたのではなかろうか。されば松は勇猛な
樹形をしているので武者の後ろ盾となり、柳は優しい
姿をしているから、女の粧いに似合うのだ。今やその風姿が
ゆきわたり、辻君までもがこの樹の下にたつことになってしまったのである。
(補足)
「かいしき」は「器に盛る食べ物の下に敷く木の葉。多く,ナンテン・カシワ・ユズリハなど常緑樹の葉を用いた」とあります。いまでも料理にいろいろな種類の葉を敷いたり添えたりします。ですので幽霊と柳が対になったとの意でしょうか。
「辻君」、辞書には「路傍に立って通行人を客とした下級の娼婦。夜鷹。立ち君。」とあります。
「朝」「有」の「月」のくずし字が同じようなかたちになってます。
「猛き可多ち有天」「やさしき姿有天」、左右「有天」が並びましたが、振り仮名は「阿り」「あり」となってます。
「此樹のもと尓」、「も」がおかしなかたちです。
「立ことゝハ成ぬ」、合字「こと」の次の「ゝ」を読み飛ばしそう。「成」は振り仮名がなければ読めません。次にお目にかかってもおそらく読めない。
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