2021年10月11日月曜日

桃山人夜話巻二 その14

P8後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

幽 霊 の可い志きとハ志多る奈るべしされバ松 ハ猛 き

ゆう連以                 まつ 多け

ゆうれいのかいしきとはしたるなるべしさればまつはたけき


可多ち有 天武者 のうしろ多゛てと奈り柳  ハやさし

   阿り むしや          や奈ぎ

かたちありてむしゃのうしろだ てとなりやなぎはやさし


き姿   有 天女  の粧  ひ尓類 せり今 や其 風 姿の

 春可゛多ありてをん奈 よ曽於  るい  いま 曽のふうし

きすが たありておんなのよそおいにるいせりいまやそのふうしの


行 王多りて辻 君 迄 も此 樹のもと尓立 ことゝハ成 ぬ

ゆき    つじぎミまで このき    多つ   奈り

ゆきわたりてつじぎみまでもこのきのもとにたつこととはなりぬ


(大意)

幽霊の受け皿(かいしき)としたのではなかろうか。されば松は勇猛な

樹形をしているので武者の後ろ盾となり、柳は優しい

姿をしているから、女の粧いに似合うのだ。今やその風姿が

ゆきわたり、辻君までもがこの樹の下にたつことになってしまったのである。

(補足)

「かいしき」は「器に盛る食べ物の下に敷く木の葉。多く,ナンテン・カシワ・ユズリハなど常緑樹の葉を用いた」とあります。いまでも料理にいろいろな種類の葉を敷いたり添えたりします。ですので幽霊と柳が対になったとの意でしょうか。

「辻君」、辞書には「路傍に立って通行人を客とした下級の娼婦。夜鷹。立ち君。」とあります。

「朝」「有」の「月」のくずし字が同じようなかたちになってます。

「猛き可多ち有天」「やさしき姿有天」、左右「有天」が並びましたが、振り仮名は「阿り」「あり」となってます。

「此樹のもと尓」、「も」がおかしなかたちです。

「立ことゝハ成ぬ」、合字「こと」の次の「ゝ」を読み飛ばしそう。「成」は振り仮名がなければ読めません。次にお目にかかってもおそらく読めない。

 

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