P11前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
第 十 三 老 人 の火
多゛以志゛うさんらうじん ひ
だ いじゅうさんろうじんのひ
信 州 遠 州 のさ可ひ奈る山 奥 尓ハ雨 の夜尓ハ多 く出 る也
志ん志 うゑん志 う や満をく あめ よ 於本 いつ
しんしゅうえんしゅうのさかいなるやまおくにはあめのよにはおおくいずるなり
魔の火尓し天人 尓さハること奈しといへども一 筋 ミち尓て
ま ひ ひと ひと春じ
まのひにしてひとにさわることなしといえどもひとすじみちにて
行 逢ふ時 ハ者き毛の越頭 尓い多ゞきて通 る尓火ハ
ゆきあ とき 可うべ 春ぐ ひ
ゆくあうときははきものをこうべにいただきてすぐるにひは
脇 の可多へとびゆく奈り是 越驚 天逃 る時 ハいづ久
王き これ 於どろき 尓ぐ とき
わきのかたへとびゆくなりこれをおどろきてひぐるときはいずく
(大意)
第十三老人の火
信州と遠州の境にある山奥に、雨の降る夜に多くでるのである。
これは魔の火であって人に害を及ぼすことはないとはいえ、一本道で
出会ったときは履物を頭にのせて通り過ぎれば、火は
脇の方へ飛んでゆく。これに驚いて逃げてしまうと、どこ(までも)
(補足)
「一筋ミち」、「筋」はなぜか「竹」と「助」が上下に離れて書かれることが多い。どうしてでしょうね。ここでも「一」と「竹」でひと文字のように見えてしまいます。
「行」、「彳」と「一」+「丁」なのに、そのおもかげがあまりありません。よく出てくるくずし字です。この形のまま覚えるのが一番。
「い多ゞきて」、変体仮名「多」の左側の曲線部分のふくらみがつぶれてしまっています。
「脇」、以前にも出てきました。「月」偏が通常の「月」のくずし字とは異なっています。
「いづ久」、ここの「く」は変体仮名「久」です。平仮名「く」の上にちょっと「丶」が付いています。変体仮名「天」(て)とそっくりなので注意。
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