P17 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
P18 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
P17
旧 鼡
きう そ
きゅうそ
P18
ふ多口 おん奈
くち
ふたくちおんな
まゝ子を尓くミて食 物 を阿多え春゛
こ しよくもつ
ままこをにくみてしょくもつをあたえず
して殺 し个連者゛継 母 の子産 れし
ころ まゝ者ゝ こうま
してころしければ ままははのこうまれし
より首 筋
くび春じ
よりくびすじ
の上 尓毛
うへ
のうえにも
口 阿り天
くち
くちありて
食 をくハんと
しよく
しょくをくわんと
いふを髪 の
可ミ
いうをかみの
はし蛇 と奈り
へび
はしへびとなり
て食 物 を阿多へ
しよくもつ
てしょくもつをあたえ
ま多何 日 毛阿多へ春゛
奈ん尓ち
またなんにちもあたえず
奈どしてくるしめ个る
などしてくるしめける
と奈んおそれつゝしむ
となんおそれつつしむ
べきハまゝ母 のそねミ
者ゝ
べきはままははのそねみ
奈り
なり
(大意)
P17 略
P18
ふた口おんな
(まま母が)まま子を憎んで食べ物を与えずに
殺してしまった。すると継母に子が生まれて
から、継母の首筋の上にも口ができて
食をとりたいというと、自分の髪の毛の
端が蛇となって食べ物を与えた。
また何日も与えないことなどもして
苦しめたりしたという。
恐れ慎むべきは継母の嫉妬である。
(補足)
「旧鼡」の本文の途中ですが、両面に図を刷る関係のためでしょう、「旧鼡」と「ふた口おんな」の絵図が入ります。
P17
でっかい歳を経た鼠ですが、おおきい黒猫にみえなくもない。ことなるのは長細い尻尾のみ。子猫は何の不思議もなく母さんしたって育つはず。
P18
文字がかすれたりつぶれたりしているので、他の版を参考にしました。
「の上尓毛」、「尓」がわかりにくいですが、ここの「尓」は英小文字筆記体「y」のようなかたち。
「はし」、平仮名「は」はひさびさ。
「何日」(奈ん尓ち)、ここの振り仮名「尓」も先程と同じ「y」。
「くるしめ个る」、最後の「る」はわかりやすいですが、最初の「る」はちょっと悩みます。変体仮名「留」(る)。
隣の部屋をのぞいて、こんな光景を見たらその場で卒倒、気を失うこと確実であります。
継母の着物が南天の葉のような柄で丁寧に描かれています。そしてなぜか左足の指先をのぞかせ左の太ももを持ち上げ気味にしてやや立て膝にしているような感じが不安を誘います。鉄瓶があってこれも五徳にのせなければならないところそれはなし、団子を食べるなら茶碗があってよいはずなのにそれもなし・・・緻密な竹の板の間を前に清楚さをただよわせ、にこやかに団子を口に運ぶ継母の「うふふ」というもれでる声と蛇となった黒髪こすれる音が聞こえてきます。
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