2021年10月13日水曜日

桃山人夜話巻二 その16

P10 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

老 人 農火

らうじん ひ

ろうじんのひ


木曽の深山

きそ ミやま

きそのみやま


尓や老人  の火といふ

  らうじん ひ

にやろうじんのひという


物 あり是 越消さんと

もの  これ け

ものありこれをけさんと


春るに水 をも川天消 共゛

   ミつ    けせ

するにみずをもってけせども


更 にきへ春゛畜 類 の皮 を

さら     ちく   可王

さらにきえず ちくるいのかわを


以 て消 者゛老 人 ともに消 るといへ里

   けせ  らうじん   き由

もってけせず ろうじんともにきゆるといえり


(大意)

老人の火

木曽の山奥に

老人の火という

ものがある。これを消そうと

するのだが、水をかけて消そうとしても

少しも消えず、動物の皮で

消すと火とともに老人も消えてしまうという。

(補足)

摺りがやや不鮮明なので、鮮明な別の版を参考にしています。

「深山」(ミやま)、「ミ」の右上の「丶」はゴミです。

「尓や」、ここの「尓」は英小文字筆記体の「y」のようなかたち。2行後の同じ位置に平仮名「に」があります。

「水」のくずし字はこのままおぼえるしかありませんが、筆の運びは「水」とおなじような感じです。

「も川天」(もつて)、変体仮名「川」(つ)。

「共゛」、ちゃんと濁点があって「ども」。

「更に」、辞書に「 (下に打ち消しの語を伴って)少しも。全然。」とありました。

 老人の有様がシワだらけですさまじい。大地につく並んだ手のひらと足はどちらがどちらだかわからずぐらい単なる五本指になっている。火箸もなぜか途中で曲がっているというこった描きよう。

色付きの絵では背景の小川がとても清涼に流れています。

 

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