P19後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
い天死し多り旧 鼠よ奈\/尓来 り天猫 尓乳汁を
し きう 曽 き多 袮こ ちゝ
いてししたりきゅうそよなよなにきたりてねこにちちを
与 へ天五疋 共 尓育 川こと越得多り彼の旧 鼠其
あ多 ごひきとも 曽多゛ え 可 きう 曽その
あたえてごひきともにそだ つことをえたりかのきゅうそその
後 ゆく可多を志ら須゛余 り尓奇談 奈り登天志るし
のち 阿ま き多゛ん
のちゆくかたをしらず あまりにきだ んなりとてしるし
置 多るを写 し天曽良 といふ毛の誹 諧 師の芭
於き うつ 曽里やう 者い可いし 者゛
おきたるをうつしてそりょうというものはいかいしのば
蕉 尓見せし尓猫 の鼠 を育 しことも阿りしと答 しと楚゛
せう ミ 袮こ 袮づミ 曽多゛て こ多へ
しょうにみせしにねこのねずみをそだ てしこともありしとこたえしとぞ
(大意)
(食らっ)て死んでしまった。年とった鼠は夜な夜なやってきて子猫に乳を
与え、五匹ともに育つことができた。かの年とった鼠はその
後、行方知らずになった。(これらのはなしが)あまりに奇談であるからと記して
あったものを曽良というものが写して、俳諧師の芭蕉
に見せたたところ、「猫が鼠を育てたこともあるよ」と答えたそうだ。
(補足)
「乳汁」、(ちちじる)ではなく、これで(ちち)。
「育川こと越得多り」、変体仮名「川」(つ)。「こと」は合字。
「彼の旧鼠」の次に「丶」があります。何でしょうか。
「曽良」、振り仮名が「そりょう」となっています。
最後の行に長い平仮名「し」が韻をふむように三つ続いています。
狼が人の子をそだてたり、また実際に犬の背に子猿がしがみついて育てられるのをみたこともあります。いろいろなんですね。恐れ慎むべきは人の心なのでしょう。
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