P17P18 国文学研究資料館蔵
(読み)
P17
モシあれ可゛
もしあれが
可年奈ら
かねなら
江のしま可ねくらと
えのしまかねぐらと
奈づけて
なずけて
くらを多つて
くらをたって
いれて於く可゛
いれておくが
ようござり
ようござり
ます
ます
このけしきハ
このけしきは
日本 多゛志可し
にほんだ しかし
奈ん多゛可
なんだ か
いやミ奈
いやみな
ひ可り可゛
ひかりが
さすぜへ
さすぜえ
ま多ゑて
またえて
ものでハ
ものでは
ねへ可
ねえか
うるさへこつ多
うるさえこった
P18
さき可ら
さきから
もつと徒゛つ
もっとづ づ
つと
っと
あび
あび
可つせへ
かっせぇ
ヤイ\/
やいやい
こらつ可い二
こらつかいに
者゛ち
ば ち
者゛らつ多
ば らった
(大意)
(手代)「もしあれが金なら、江の島金蔵と名付けて蔵を建てて、入れておくのがようござりましょう」
(萬々)「この景色は最高だ。しかしなんだか嫌味な光がさすぜぇ。また得手物(例のもの(お金)))ではねぇか。なんてぇこった」
(漁師)「先の方をもっとズズッと網を引かっせぇ」
(漁師)「???」(意味不明です)
(補足)
ここの文章もかすれやかけが多く、前後の流れから推測しながらの読みとなります。
「ゑてもの」、『えて【得手】
③ (聞き手にそれと分かる事物・人物・場所などをさして)例のもの。例のこと。例のところ。「歩(あい)ばつし。―へ行つて,ももんぢいで四文(しもん)二合半(こなから)ときめべい」〈滑稽本・浮世風呂•3〉』
『えてもの 【得手物】
② →えて(得手)3に同じ。「また―(=オ金ノ意)ではねえか」〈黄表紙・莫切自根金生木〉』
地引網の先端付近から十本くらいの後光のような光の線が出ていますが、これが「いやミ奈ひ可り可゛さす」でしょう。
最後の漁師の言葉はよくわかりませんが、網をしっかり引けと言われて、いや何かが引っかかってしまって網がバラけてしまいそうだ、のような意味合いでしょうか。三浦半島周辺から鎌倉逗子平塚小田原と、沿岸の漁師は独特の浜言葉があって陸のものにはわからない一種の方言があります。
浜の中央では萬々手代がのんきに地引網を眺めています。
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