P1P2 国立国会図書館蔵
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(読み)
今 ハむ可しか多い奈可に
いまはむかしかたいなかに
金 むらや金 兵へといふ者
かねむらやきんべえというもの
あり个りむまれつき心
ありけりむまれつきこころ
由ふ二してうき世の多の
ゆうにしてうきよのたの
しミをつくさんとお毛へともい多川てまづしくして
しみをつくさんとおもえどもいたってまずしくして
こゝろ二ま可セ須よつて津く\/お毛ひつき者んく王
こころにまかせずよってつくづくおもいつきはんか
のミやこへ出て本うこうを可セき世二出天
のみやこへでてほうこうをかせぎよにでて
お毛ふまゝにうき世の多のしミをき王
おもうままにうきよのたのしきをきわ
免んとお毛い多ちまづ江戸
めんとおもいたちまずえど
乃本うへと古ゝろざし个る可名
のほうへとこころざしけるがな
(大意)
いまは昔、片田舎に金村屋金兵衛というものがいた。生まれつき心優しく、浮世の楽しみをつくそうとおもうのだけれども、とても貧しかったので思う通りにはできなかった。ならばとよくよく考えておもいついたのが、にぎやかな都会に出て奉公口にありつき、お金をかせいで出世し、おもうままに浮世の楽しみをきわめようとすることで、まず江戸の方へと向かうことを決めた。しかし
(補足)
「金兵へ」、連判状などの古文書には「何とか兵衛」という名前がズラズラっと連名してあって、それらくずし字の「〜兵衛」とここのは違っていて、平仮名の「へ」になっているようです。
「いふ者」、「者」のくずし字は変体仮名「志」(し)に似ていて、変体仮名「者」(は)のかたちとは異なっています。変体仮名「者」(は)のかたちは平仮名「む」の最後が上にあがらないで右斜め下にながれるようなかたち。
「むまれつき心」、平仮名「れ」の左側に「ゝ」があります。現在の「れ」の一画目は縦棒ですけど、この「れ」は左の「ゝ」が最初で次に英小文字「n」のような筆順でしょうか。
「心」のくずし字はよく読み違えてしまいます。
「津く\/」、「く」と\/記号が同じなので、読みをちと考えてしまいます。
「ミやこへ出て」、「出」のくずし字が平仮名「お」と全く同じかたちなので、前後の流れから判断するしかありません。
金兵衛旅装束、これが正しい旅姿のようであります。ちょっと暑苦しそうですけど。
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