2024年7月31日水曜日

金々先生栄華夢 その9

P4 国立国会図書館蔵

(読み)

本うセんじ可ご尓うち

ほうせんじかごにうち


のセい川゛くともなくともない由くこ楚ふしぎ

のせいず くともなくともないゆくこそふしぎ


なる

なる


うれしヤ\/  やうやく若

うれしやうれしやようやくわか


多ん奈をさ可゛し

だんなをさが し


多゛し多楚

だ したぞ


う川ちや川て

うっちゃって


おけ春ゝ者き二

おけすすはきに


出よふとい川多

でようといった


ハこのこつ多

はこのこった


あろう

あろう


金 兵衛お毛いも

きんべえおもいも


よらざること

よらざること


いとふしん二お

いとふしんにお


毛ひ个れとも

もいけれども


古れさい王い

これさいわい


ふくとくの三

ふくとくのさん


袮ん目あい

ねんめあい


多口 へ毛ち

たくちへもち


天 へもあ可る

てんへもあがる


古ゝちして則

ここちしてすなわち


可ご尓うち

かごにうち


のりていづ

のりていず


くをあて毛

くをあても


なく出 由き

なくいでゆき


个る

ける

(大意)

宝泉寺駕籠に押し込め乗せられて、どこかへと運ばれてゆくのが不思議

なことであった。

「うれしやうれしや、ようやく若旦那をさがしだしたぞ」

「うっちゃっておけ。煤掃きのときに見つかるといったのは、

このこったろう」

 金兵衛は思いもよらないことで、ひどく疑わしく勘ぐったのだけれど

これ幸いと、福徳の三年目、あいた口へ餅、天へものぼる心地がして、すぐに

駕籠にとびのって、どこかへとあてもなく出発したのだった。

(補足)

 この部分、かすれがあって、他の資料を参考に読みました。

「春ゝ者き二出よふ」、年末の大掃除のときには見つかるだろう。

「ふくとくの三袮ん目」、『福徳の三年目〔福徳の御利益は三年目にめぐってくるということから〕意外な幸運に出合うこと』

 駕籠の右後ろ、白無地の着物の方、鼠の嫁入りの白ねずみのように見えます。顔は右向きになって、耳は人の耳ではなくネズミの耳に見えませんか。遊び心で描き入れたのかもしれません。

 

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