2024年8月1日木曜日

金々先生栄華夢 その10

P5P6 国立国会図書館蔵

P5

(読み)

金 飛゛やうへ可のかごに

きんび ょうえかのかごに


うちのり由く本ど二

うちのりゆくほどに


本ど奈くいづミヤの

ほどなくいずみやの


門 尓い多りぬヤ可

もんにいたりぬやが


てかごより出 し

てかごよりいでし


者゛んとう手代 左きに多ち

ば んとうてだいさきにたち


と毛奈い由くにその

ともないゆくにその


春まひの个つ可うさ

すまいのけっこうさ


まことに玉 のきざ者し

まことにたまのきざはし


るりの戸者゛りとも

るりのとば りとも


い川べきありさ満

いつべきありさま


びやう婦゛

びょうぶ


ふすまにハ

ふすまには


金 ぎんの

きんぎんの


春奈ごを

すなごを


奈らべつい

ならべつい


多て二小金

たてにこがね


の日 里んを

のにちりんを


可ゝセ可らかみ

かかせからかみ


に志ろ可年の

にしろがねの


月 里んをあ

げつりんをあ


ら王し多り

らわしたり


本ど奈く

ほどなく

(大意)

 金兵衛(きんびょうえ)はあの駕籠にのって行くと、ほどなく和泉屋の門に着いた。そこで駕籠から出て、番頭・手代が先導し案内に従って進んでゆくと、その住まいの見事なこと、まことに玉を敷きつめた階段、瑠璃の扉とも云うのであろうか、屏風・ふすまには金銀の砂子をちらし、衝立に黄金(こがね)の日輪を描かせ、唐紙には銀(しろがね)の月輪をあらわしてあった。

 しばらくすると、

(補足)

 ここの文章もかすれや不鮮明なところがおおく、他の資料を参考にして読んでいます。

「かごより出し」、「出」がどうしても「お」と読んでしまいます。

「左きに多ち」、変体仮名「左」(さ)はどうも不慣れで、さてこれは?と悩みます。

 まるで歌舞伎の舞台のよう。三部屋続きで縁側がありそれにつづいて庭が遠くまであって左側には蔵があります。そしてずっと奥にやっと塀がのぞめます。当時としてはかなり大胆な遠近法で西洋画から拝借したのかもしれません。

 金兵衛が挨拶している部屋の右の部屋に、裃姿の金兵衛を連れてきた責任者の後ろ姿があり、なかなか芸が細かい。また、手前の部屋には接待の腰元が三方をもって入ってくるところ。どちらも絵に動き与えています。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿