P6P7 東京都立中央図書館
(読み)
「ミづ
みず
可らと
からと
申 ハ
もうすは
そも
そも
よるべ
よるべ
さ多゛
さだ
めぬ
めぬ
ころひつまこの志んミち二
ころびつまこのしんみちに
すミ奈れてひとのこゝろを
すみなれてひとのこころを
上P7
う王き尓する白 びやうしで
うわきにするしらびょうしで
ござんすかや者゛丁 の
ござんすかやば ちょうの
夕 やくしでこちのゑん二郎 さんを
ゆうやくしでこちのえんじろうさんを
うゑ木の可げ可ら
うえきおかげから
ミそめまし多
みそめました
女 本゛う二する
にょうぼ うにする
こと可゛奈らずハ
ことが ならずば
於まんまなと
おまんまなど
多いても於り多いのさ
たいてもおりたいのさ
それも奈らぬと
それもならぬと
於つしや連バ
おっしゃれば
志ぬ可くごで
しぬかくごで
ござります
ござります
な
な
どゝ
どと
ち う
ちゅう
もん
もん
どをり
どおり
の
の
せりふ
せりふ
を奈らべ
をならべ
多てる
たてる
(大意)
おゑん「わたしはと申しますと、そもそもどこのだれかもわからぬころび芸者、この新道に住みなれて、ひとの心を浮気にする白拍子でござんす。茅場町の夕薬師でこちらの艶二郎さんを植木のかげから見初めました。女房にすることがならずんば、おまんま(御飯)など炊いてもそばにおりたいのさ。それもならぬとおっしゃれば、死ぬる覚悟でござります」などと頼んでおいた通りの台詞をならびたてた。
(補足)
「ミづ可らと申ハ〜」、この部分河東節道成寺のもじりとありました。もとの歌詞は「自らと申すはそも 寄るべ定めぬ忍び妻 波に漂よふ浮寝鳥 浮いつ沈みつやうやうと 紀の路の奥に住み馴れて 月を友 雪を褥に眺むる花は 人の心を慰さむる 白拍子の鼓草」。
「そも」、『そも【抑】(接続)〔代名詞「そ(其)」に係助詞「も」の付いたもの〕
前に述べたことを受けて次のことを説き起こすとき用いる語。そもそも。一体全体。「坊さんが何か云てたよ。―何とかいつたつけ」〈怪談牡丹灯籠•円朝〉』
「ころひつま」、なんのことかサッパリ。「ころび妻」でした。『ころび【転び】③ 芸者などが芸ではなくて,体を売ること。「―芸者」』。
「かや者゛丁の夕やくし」、こんなににぎわいました。
NDL蔵 茅場町薬師堂(夕薬師)門前 (江戸名所図会 巻1)
「夕やくし 春ゝしき風の 誓可南 其角」
おゑんのよよと泣く姿、(嗚咽しながらのセリフを声を出して節をつけながら読んでみると、歌舞伎役者になった気分)、肩がふるえているようにみえるくら上手です。
そのおゑんさんの前にある煙草入れの箱がアリ組で組み立てられています。手の込んだ高級な作りです。
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