P4 東京都立中央図書館
(読み)
ゑん二郎 ハ
えんじろうは
まづ
まず
本り
ほり
もの可゛
ものが
う王
うわ
きの
きの
者じ
はい
まり
まり
奈りと
なりと
両
りょう
本うの
ほうの
うで
うで
ゆび
ゆび
の
の
ま多まで
またまで
二三 十 本ど
にさんじゅうほど
あても奈き
あてもなき
本りものをし
ほりものをし
い多いのをこらへて
いたいのをこらえて
こゝ可゛いのち多゛と
ここが いのちだ と
よろこび个り
よろこびけり
中 尓
なかに
ちと
ちと
きへ
きえ
多のも
たのも
奈く
なく
てハ
ては
王るい
わるい
可ら
から
あとで
あとで
ま多
また
き うを
きゅうを
すへ
すえ
やせ う
やしょう
いろ於とこニ
いろおとこに
奈るもとん多゛
なるもとんだ
つらいもの多゛
つらいものだ
(大意)
艶二郎はまず彫り物がうわきの始まりであるからと、両方の腕と指のまたまで二三十ほど適当な名前の彫り物をして、痛いのをこらえて、ここが頑張りどころ気持ちの良いものだと喜んだ。
喜之介「(彫った名前の)中にちっとは(灸で)消したようなものもなくては具合が悪いから、あとでまた灸をすえましょう」
艶二郎「色男になるのも、とんでもなくつらいものだ」
(補足)
「両本うのうで」、「両」のくずし字は頻出です。
「こゝ可゛いのち多゛」、「命だ」というのは、彫り物に「誰それ命」と彫るのでその洒落、とありました。
「きへ多のも奈くてハ」、女の嫉妬で灸で消したようなのもあったほうが本当っぽくみえる。なかなか芸の細かいことをするものです。
彫り物をしているのは(膝下に墨と硯がある)、喜之介(羽織が前頁と同じ)のよう。
屏風の柄が朝顔の絞り染めのようで、わざわざこんな彫師泣かせのものにしなくてもと、おもってしまいます。障子のむこうに手すりがみえて、この部屋は二階にあるのでしょうか?
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