2024年8月28日水曜日

江戸生艶氣樺焼 その7

P4 東京都立中央図書館

(読み)

ゑん二郎 ハ

えんじろうは


まづ

まず


本り

ほり


もの可゛

ものが


う王

うわ


きの

きの


者じ

はい


まり

まり


奈りと

なりと


りょう


本うの

ほうの


うで

うで


ゆび

ゆび



ま多まで

またまで


二三 十  本ど

にさんじゅうほど


あても奈き

あてもなき


本りものをし

ほりものをし


い多いのをこらへて

いたいのをこらえて


こゝ可゛いのち多゛と

ここが いのちだ と


よろこび个り

よろこびけり


中 尓

なかに


ちと

ちと


きへ

きえ


多のも

たのも


奈く

なく


てハ

ては


王るい

わるい


可ら

から


あとで

あとで


ま多

また


き うを

きゅうを


すへ

すえ


やせ う

やしょう


いろ於とこニ

いろおとこに


奈るもとん多゛

なるもとんだ


つらいもの多゛

つらいものだ

(大意)

 艶二郎はまず彫り物がうわきの始まりであるからと、両方の腕と指のまたまで二三十ほど適当な名前の彫り物をして、痛いのをこらえて、ここが頑張りどころ気持ちの良いものだと喜んだ。

喜之介「(彫った名前の)中にちっとは(灸で)消したようなものもなくては具合が悪いから、あとでまた灸をすえましょう」

艶二郎「色男になるのも、とんでもなくつらいものだ」

(補足)

「両本うのうで」、「両」のくずし字は頻出です。

「こゝ可゛いのち多゛」、「命だ」というのは、彫り物に「誰それ命」と彫るのでその洒落、とありました。

「きへ多のも奈くてハ」、女の嫉妬で灸で消したようなのもあったほうが本当っぽくみえる。なかなか芸の細かいことをするものです。

 彫り物をしているのは(膝下に墨と硯がある)、喜之介(羽織が前頁と同じ)のよう。

屏風の柄が朝顔の絞り染めのようで、わざわざこんな彫師泣かせのものにしなくてもと、おもってしまいます。障子のむこうに手すりがみえて、この部屋は二階にあるのでしょうか?

 

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