2024年8月17日土曜日

金々先生栄華夢 その26

P15P16 国立国会図書館

P15

(読み)

きん\/せんせい所  \/ 尓て

きんきんせんせいところどころにて


大 きく者められ今 ハ毛ハや

おおきくはめられいまはもはや


ひ可りもうセ者て日ころ

ひかりもうせはてひごろ


者い可ゝみし毛のも志ら

はいかがみしものもしら


ぬふり二てよりつ可すむ

ぬふりにてよりつかずむ


袮んしごくにお毛い个れ

ねんしごくにおもいけれ


ともセん可多奈く今 ハ

どもせんかたなくいまは


四ツ手尓ておさセる力  も

よつてにておさせるちからも


奈く

なく


やう

よう


やく

やく


者川ちし里者志よ

ぱっちしりはしょ


おりにきりのま

おりにきりのま


さ下多と出可け

さげたとでかけ


こゝろ本楚くも多ゞ

こころぼそくもただ


ひとり夜な\/品 川 へ

ひとりよなよなしながわへ

P16

可よひ个る

かよいける

(大意)

 金々先生はあちこちでひどく騙され金をまきあげられ、今となっては

金の威光も失せはて、日頃平身低頭していた者共も、しらぬふりをして

よりつかず、無念至極におもっていた。しかたのないことであるが、今は

四手駕籠で(勢いよく)とばすだけの力もなく、やっとのことで、パッチを

尻端折りにして桐の柾下駄の格好で出かけ、心細くではあったがただ一人だけで

夜な夜な品川へ通ったのだった。

(補足)

「所\/」、ここの「所」は楷書にちかい。

「毛ハや」「毛のも」「お毛い个れとも」など、「を」のようなかたちをした変体仮名「毛」でわかりずらいですが、前後の流れも参考にして読みます。

 下駄は草履よりもやくざめいた履物だった、とありました。現在では桐の柾下駄はとても高級品です。

 高輪大木戸の図で、現在でも現存するそうです。すっからかんの先生が悔しそうにながめているのは、お供を従えこれから品川にくりだそうと景気よくとばしている駕籠。品川の宿場女郎は吉原や深川よりも格が低く、転落した身の先生にはふさわし遊所である。とありました。

 文中の表現どおりの姿の金々先生、ぱっちが太いような気もします。

 

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