P7P8 国立国会図書館蔵
P7
(読み)
金 兵へ
きんべえ
可とくお
かとくを
つぎて
つぎて
より奈尓二
よりなにに
ふそくも
ふそくも
奈个れハ多゛ん\/おごり尓ちやうじ日 や志由ゑんをのミ事 と
なければだ んだんおごりにちょうひにちやしゅえんをのみことと
奈しむ可しの春可゛多ハ引 可へていまハあ多まも中 ぞりをびんのあ多り
なしむかしのすが たはひきかえていまはあたまもなかぞりをびんのあたり
までそり可みのけをハ袮づミの志りをくらい二して
までそりかみのけをばねずみのしりおくらいにして
本ん多゛二由いき毛のハくろ者ぶ多へつく免
ほんだ にゆいいものはくろはぶたえづくめ
おひハ飛゛ろうとま多ハハ可多
おびはび ろうどまたははかた
おりふうつう毛うるなとゝ
おりふうつうもうるなどと
出可けあら由るとうせいの志やれをつくセばるいハ友 を
でかけあらゆるとうせいのしゃれをつくせばるいはともを
も川てあつまるならい二て手代 の源 四郎 多いこ持 のまん八 ざとうのご
もってあつまるならいにててだいのげんしろうたいこもちのまんぱちざとうのご
市 なぞ心
いちなぞこころ
をあ王セこゝをセんど
をあわせここをせんど
とそゝ
とそそ
奈可し
なかし
ける
ける
(大意)
金兵衛、家督を継いでからというもの、何の不満もなくだんだん慢心がはなはだしくなり、日夜酒宴だけをするようになってしまった。むかしの姿はすっかりなくなってしまい、いまは頭も中剃りを鬢のあたりまで剃り、髪の毛はねずみの尻尾の毛ほどにして本多に結い、着物は黒羽二重ずくし、帯はビロードか博多織り、風通モールなで出かけ、あらゆる当世のおしゃれを尽くした。
類は友を呼ぶのことわざ通り、手代の源四郎、太鼓持ちの万八、座頭の五市などが結託してここが攻めどころとそそのかした。
(補足)
「ふうつう毛うる」、『風通織りを応用したモール。一般に,金・銀糸を用いないものをいう』。『ふうつうおり【風通織り】二重織りの一種。異なる色の糸を用いて,二重組織の平織りとし,表と裏に同じ文様が異なる色で表れるように織ったもの。風通』
「源四郎」、『げんしろう げんしらう 【源四郎】〔人形浄瑠璃の隠語から〕
金銭や数をごまかすこと。ぴんはね。また,そうする人。「おまへさんがたの―してぢや」〈滑稽本・東海道中膝栗毛•8〉』
「まん八」、『まんぱち 【万八】
① 〔万のうち真実は八つだけの意〕うそ。ほら。また,うそつき。千三つ。「世に―といふ事は,此の男より始まりける」〈浄瑠璃・神霊矢口渡〉
② 酒の異名。「日用の―と申し候」〈浄瑠璃・当麻中将姫〉』
「ざとうのご市」、座頭の名はなんとか市と市の字をつける。それに、丁半博打の賽の目の五と一が出たのを五一(ぐいち)というのを掛けた洒落。とものの本にはありました。
「セんど」、『せんど【先途】
① 勝敗や運命を決する大事な分かれ目。せとぎわ。多く「ここを先途と」の形で用いる。「ここを―と戦う」』
金兵衛、当世はやりの本多髷だけあって、描き方もねんがいっているようにおもわれます。
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