2024年8月11日日曜日

金々先生栄華夢 その20

P11P12 国立国会図書館蔵

P11

(読み)

あゝふ川多る雪 可奈

ああふったるゆきかな


世尓奈き人 ハさ楚゛

よになきひとはさぞ


さむ

さむ


可らん

からん


雪 ハが毛ふ二

ゆきはがもうに


尓てとんでさんらんし

にてとんでさんらんし


人 王可みこをきて川 へ

ひとはかみこをきてかわへ


者まらうとアゝまゝよ

はまろうとああままよ

(大意)

 あぁ降りにふった雪だなぁ。

貧しいものたちはさぞ

寒いことだろうな。

雪は鵞鳥の羽ににて

(白く)あたりいちめんに飛んでいる。

(貧しい)人がどうなろうと

あぁ知ったこっちゃねえ。

(補足)

 金々先生のこの部分のセリフは謡曲「鉢木(はちのき)」のもじりとありました。

『ああ 降ったる雪かな 如何に世にある人の面白う候ふらん

 それ雪は鵞毛に似て飛んで散乱し 人は鶴氅(かくしょう)を着て立って徘徊すと言へり』

「さんらん」、現代では光が散乱するのように使いますけど、雪や羽がフワフワ舞う様子にも使っていたのですね。

「可みこ」、『かみこ【紙子・紙衣】

紙で仕立てた衣服。厚手の和紙に柿渋(かきしぶ)を塗って乾かし,もみ柔らげたもので仕立てる。もとは僧が用いたが,のちに一般の人々も防寒用に着た。かみぎぬ。季冬「飯粒で―の破れふたぎけり」蕪村』

「可みこをきて川へ者まらう」、『紙子着て川へはま・る

無謀なことをして,自ら破滅を招くことのたとえ。紙子着て川へはいる』

 供の小座頭に着替えを持たせ、雪中「ミやも登」へ行く金々先生は深草の少将きどりとありました。この頁、この深草の少将や謡曲「鉢木(はちのき)」のあらすじを知らないと、面白みが理解できません。

 

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