P11P12 国立国会図書館蔵
P12
(読み)
この大 雪 尓お可ご尓も免しま
このおおゆきにおこがにもめしま
せず可ゞミのゝ御いで多ちハ
せずかがみののおいでたちは
ソレヨ多川ミの里 尓
それよたつみのさとに
ちよきハあれど君 を
ちょきはあれどきみを
おもへバ可ち者多゛しと
おもえばかつはだ しと
いふ御志由可う
いうごしゅこう
おそろ\/
おそろおそろ
(大意)
この大雪に御駕籠も使わずに、加賀蓑のお姿は、
これはまさか、「辰巳の里に猪牙(舟)はあれど君をおもえば徒歩跣足」という
ご趣向でしょうか、恐れ入り感服でございます。
(補足)
ソレヨ以下のセリフは謡曲「通小町」『山城の木幡の里に馬はあれども君を思えば徒歩跣足(かちはだし)さてその姿は笠に蓑身の憂き世とや竹の杖(山城の木幡の里には馬もいたけれど、あなたをおもえば裸足で蓑笠つけて、竹の杖をついて通った)』のもじりとありました。
「ちよき」、猪牙船のこと。『【猪牙舟】
① 和船の一。江戸時代,市中の水路で大量に使われた一人あるいは二人漕(こ)ぎの屋根のない船で,舳(みよし)が長く船足が速い。吉原の遊び客の足として盛んに用いられた。関西ではちょろと呼ぶ。ちょけぶね。ちょき。山谷船』
万八の顔がオネエっぽくてきれいだし、身のこなしもどこかしなをつくってなまめかしい。ちょっと声を裏返したセリフの声が聞こえてきそう。
竹垣の柵に積もった雪の質感がうまいものです。隙間をとおしてちゃんと奥の(悪)女(おまず)も描かれています。
縦書きの看板「ミやも登」は変体仮名、横書きというか一行一文字の看板「宮本」は楷書。
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