2024年8月29日木曜日

江戸生艶氣樺焼 その8

P5 東京都立中央図書館

(読み)

ゑん二郎 ハやくしやの

えんじろうはやくしゃの


うちへうつくしき

うちへうつくしき


むすめ奈どの

むすめなどの


かけこむをう王

かけこむをうわ


き奈ことゝうら

きなこととうら


やましく

やましく


おも

おも



きん

きん


志゛よ

じ ょ



ひや

ひょ



者゛




げいしや

げいしゃ


おゑんといふ於どりこ

おえんというおどりこ


を五十  両  尓てやとい

をごじゅうりょうにてやとい


可けこませる

かけこませる


つもり尓て

つもりにて


王るい志あん

わるいしあん


多のミ

たのみ


き多る

きたる


これ可゛多のミの

これが たのみの


とも可くも

ともかくも


於あや可り申  て

おあやかりもうして


ちと

ちと


し由つ

しゅっ


せの

せの


すじさ

すじさ


可けこむ者゛可り

かけこむば かり


奈らずいふん

ならずいぶん


志ようちさ

しょうちさ

(大意)

 艶二郎は役者の家へ美しい娘などたちが駆け込むのを浮気なこととうらやましくおもい、近所の評判の芸者おゑんという踊り子を五十両でやとい、駆け込ませるようにとわるい志庵をたのみに行かせた。

志庵「これがたのみではあるがそれはともかくも、こっちもおやかり申して、ちといい目をみたいところなのさ」

おゑん「駆け込むだけならば、たしかに承知しましたよ」

(補足)

 志庵が口にしているのはのびている餅ではなくて、歌舞伎役者の仕草をまねて手ぬぐいのよう。なのでセリフもきっとなにか有名な芝居の一節なのかも。

 棚があって、たいていは神棚などがおさまっていますが、ここのは黒い箱、三味線箱でしょうか。三味線はふつうは箱の蓋がカパッとはずせるけんどん(倹飩)箱におさめます。おゑんねえさん、襟元をおおきくあけ、長ギセルにちょっと立て膝で薄肌色に塗られてなんとも色っぽい、間仕切り屏風の上にかけられた紐まで塗られています。

 ちょっとかわった煙草盆も、右の引き出しをあけているところが、なかなかの細かさ。

 床の間というかちょっと変わった棚には蘇鉄の盆栽のようなものがあっておしゃれです。

 

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