2024年8月10日土曜日

金々先生栄華夢 その19

P11P12 国立国会図書館蔵

P11

(読み)

きん\/せんせい北 こくの

きんきんせんせいほっこくの


あそびも志つくし个れ者゛

あそびもしつくしければ


古れより多つミの里 と出可け

これよりたつみのさととでかけ


あらゆるさへをつくし个り

あらゆるさへをつくしけり


されども尓和可の志やれ奈れバ

されどもにわかのしゃれなれば


さしたるおちのくることも奈し

さしたるおちのくることもなし


多ゞ阿ミ多の飛可りも金 本ど二て

ただあみだのひかりもかねほどにて


山 ぶきいろをま起ちら春由へ

やまぶきいろをまきちらすゆへ


ミ奈きん\/せんせいと毛て者やし

みなきんきんせんせいともてはやし


个る

ける

(大意)

 金々先生は北国(新吉原)の遊びもしつくしたので、こんどは

辰巳の里(深川遊里)へ出かけ、数々の遊興を残らずおこなった。しかしながら、おもいつきのたわむれであったため、それほど人々の気を引くこともなかった。

 ただ、「阿弥陀の光も金ほどに」のように、山吹色(小判)をまき散らしたので、皆、金々先生ともてはやした。

(補足)

「古れより」、変体仮名「古」(こ)が悩みます。「より」は虫に食われてしまいました。

「多つミの里」、江戸の辰巳(南東)にある深川。

「さへ」、『さえ【冴え・冱え】〔動詞「さえる」の連用形から〕

④ (遊里で)興がますこと。また,遊興。酒宴。「これより辰巳の里と出かけ,あらゆる―をつくしけり」〈黄表紙・金金先生栄花夢〉』

「阿ミ多の飛可りも金本ど二」、『阿弥陀の光も金次第 (かねしだい)

阿弥陀の利益(りやく)も寄進した金の多寡で決まる意で,すべてのことは金次第でどうにでもなるものだということ。阿弥陀も銭(ぜに)で光る。地獄の沙汰(さた)も金次第』

 金々先生のいでたちは当時流行の最先端のようです。加賀蓑(かがみの)、『加賀国から産出した上等の蓑。細い草で編み,萌黄糸で編んだ網をかけて使った』というもので、たしかに肩から網をかけています。これ萌黄色なんですね。袖や腰のあたりが白くなってますが、これは雪がついた様子の描写。そして雪なので高下駄です。

 

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