2024年7月2日火曜日

莫切自根金生木 その27

P15 国文学研究資料館蔵

(読み)

よもやモウぬ春んで

よもやもうぬすんで


可へりまし多ろう

かえりましたろう


御可へり

おかえり


奈さり

なさり


ませ

ませ


ふう婦可゛

ふうふが


かへりし

かえりし


こゑを

こえを


きくと

きくと


そのミ者゛可りあしを

そのみば かりあしを


者可り二尓げてゆく

ばかりににげてゆく


それ多可ら

それだから


マアちつと

まぁちっと


者゛可りでも

ば かりでも


とれバよ可つ多

とればよかった


ものを

ものを


王きで

わきで


ぬすん多゛ものまで

ぬすんだ ものまで


於ゐて

おいて


ゆくとハ

ゆくとは


て う志゛やの

ちょうじ ゃの


者ぎへミそを

はぎへみそを


つけ多せんぎ多

つけたせんぎだ

(大意)

(萬々の妻)「おそらくもう盗んで帰ったでしょう。おかえりなさいませ」

 夫婦が帰宅した声を聞き、その身だけで、脚だけで一目散に逃げていった。

(盗人)「こんなことならまぁ、もうちょっとでも盗めばよかったものだ。そばで盗んだものまで置いてゆくとは、長者の脛(はぎ)へ味噌をつけたことになっちまう」

(補足)

「てう志゛やの者ぎへミそをつけ」る、『あり余った上にさらに物を加えること』。有り余る金を持つ萬々の家に、盗んできた小金を置いてきてしまったことの洒落。

 盗人二人、完全な泥棒装束(or忍者装束)ではなく、上半身は単衣そのままのよう。

 

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