P15 国文学研究資料館蔵
(読み)
よもやモウぬ春んで
よもやもうぬすんで
可へりまし多ろう
かえりましたろう
御可へり
おかえり
奈さり
なさり
ませ
ませ
ふう婦可゛
ふうふが
かへりし
かえりし
こゑを
こえを
きくと
きくと
そのミ者゛可りあしを
そのみば かりあしを
者可り二尓げてゆく
ばかりににげてゆく
それ多可ら
それだから
マアちつと
まぁちっと
者゛可りでも
ば かりでも
とれバよ可つ多
とればよかった
ものを
ものを
王きで
わきで
ぬすん多゛ものまで
ぬすんだ ものまで
於ゐて
おいて
ゆくとハ
ゆくとは
て う志゛やの
ちょうじ ゃの
者ぎへミそを
はぎへみそを
つけ多せんぎ多
つけたせんぎだ
(大意)
(萬々の妻)「おそらくもう盗んで帰ったでしょう。おかえりなさいませ」
夫婦が帰宅した声を聞き、その身だけで、脚だけで一目散に逃げていった。
(盗人)「こんなことならまぁ、もうちょっとでも盗めばよかったものだ。そばで盗んだものまで置いてゆくとは、長者の脛(はぎ)へ味噌をつけたことになっちまう」
(補足)
「てう志゛やの者ぎへミそをつけ」る、『あり余った上にさらに物を加えること』。有り余る金を持つ萬々の家に、盗んできた小金を置いてきてしまったことの洒落。
盗人二人、完全な泥棒装束(or忍者装束)ではなく、上半身は単衣そのままのよう。
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