2024年7月30日火曜日

金々先生栄華夢 その8

P4 国立国会図書館蔵

(読み)

をたゞしいぎを津くろい申  けるハ楚も\/

をただしいぎをつくろいもうしけるはそもそも


王れ\/ハ神 田の八 丁  本゛り尓とし久 しく春まい

われわれはかんだのはっちょうぼ りにとしひさしくすまい


い多すい川゛ミヤ清 三と申  毛のゝ家来 なり

いたすいづ みやせいざともうすもののけらいなり


志可るに主 人 清 三多ん\/老 春いい多し候   所

しかるにしゅじんせいざだんだんろうすいいたしそうろうところ


いま多一 子なしことに古ん袮んてい者つ

いまだいっしなしことにこんねんていはつ


い多し名をぶん春゛ひとあら多免候

いたしなをぶんず いとあらためそうろう


よ川てあと志きゆづる遍゛き人 も

よってあとしきゆずるべ きひとも


可゛奈と多川゛袮候   所  二さい王い

が なとたず ねそうろうところにさいわい


古の多び君 志由川世をのぞみ

このたびきみしゅっせをのぞみ


多まひ古れまでき多り給 ふよし

たまいこれまできたりたもうよし


主 人 としご路志んじんい多す所

しゅじんとしごろしんじんいたすところ


の万 八 まん大 本さ川のつげ尓ま可セ

のまんはちまんだいぼさつのつげにまかせ


古れまで王れ\/来 り多り袮可

これまでわれわれきたりたりねが


王くハ主 人 文 春゛いの望  尓

わくはしゅじんぶんず いののぞみに


ま可セ多まへとむり(に)可の

まかせたまえとむり に かの

(大意)

(を着て威儀をただし申すには)「そもそも

わたしたちは神田八丁堀に長年住んでおります

和泉や清三と申すものの家来であります。

 その主人清三のことでどざいますが、だんだん老衰いたしておりますれば

いまだに子がなく、ことに今年剃髪

いたし、名を文ずいと改めました。

したがいまして、跡目を譲るべき人が

いないものかと探していましたところに、さいわい

このたび貴方様が出世をのぞまれ

ここまでやってらっしゃったよし、

主人がここ数年信心している

万八万大菩薩のお告げにまかせて

ここまでわれわれはやってまいりました。

願わくは主人文ずいの望みに

従ってくだされませと無理にあの

(補足)

「も可゛奈」、『もがな(終助)〔終助詞「もが」に終助詞「な」の付いたものから。上代の「もがも」に代わって,中古以降用いられるようになった〕

文末にあって,体言,形容詞や打ち消しの助動詞「ず」および断定の助動詞「なり」の連用形,一部の助詞などに付く。強く望み願う意を表す』

「万八まん大本さ川」、『まんぱち 【万八】

① 〔万のうち真実は八つだけの意〕うそ。ほら。また,うそつき。千三つ。「世に―といふ事は,此の男より始まりける」〈浄瑠璃・神霊矢口渡〉』。嘘っぱちの大菩薩。

「主人としご路志んじんい多す所」、変体仮名「路」(ろ)はよく使われます。「ん」と「じ」が重なってます。「い」の一画目がかすれてほとんどみえません。

「文春゛いの望尓」、「望」のくずし字、平仮名「ら」の途中から「里」のくずし字になるようなかたち。

「むり(に)可の」、「に」は原文にはありません。

 

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