序 国立国会図書館蔵
(読み)
傳 授 乃如 し金 ある者 は金 々 先 生 とな里
でんじ由 可年
でんじゅのごとしかねあるものはきんきんせんせいとなり
金 奈き毛のハ由ふでく頓 直 と奈るさ春れハ
とんちき
かねなきものはゆうでくとんちきとなるさすれば
金 々 先 生 ハ一 人の名尓し天壱 人 の名二あら須
きんきんせんせいはひとりのなにしていちにんのなにあらず
神 銭 論 尓い王ゆる是 を得る毛のハ前 二多ち
しんせんろん これ う まへ
しんせんろんにいわゆるこれをうるものはまえにたち
これを失 ふ毛のハ後 尓多川とそれ是 これ
し里
これをうしなうものはしりにたつとそれこれこれ
云ふ可と云 云
いうかとうんぬん
画工 戀 川 春 町 戯作 角印
がこうこいかわはるまちげさく
(大意)
金のあるものは金々先生となり、金なきものは田舎者で野暮な男となる。であれば、金々先生はひとりの名ではあるが、そのようなものは世の中にたくさんいることになる。
神銭論によれば「これ(銭)をうるものは前にたち、これ(銭)を失うものは後ろにたつ」とある。それやこれ、これまで云うのかとやれやれ。
(補足)
「金々先生とな里」、前回、変体仮名「梨」(り)としましたが、どうやら変体仮名「里」(り)のようです。
「ゆふでく」、『ゆうでく〔近世,深川の遊里語。「遊木偶」の意ともいう〕
田舎者をののしっていう語。「ひやうたくれ,―の揃ひだ」〈洒落本・辰巳之園〉』
「頓直」、『とんちき 1【頓痴気】〔「とん」は「とんま」の「とん」,「ちき」は「いんちき」の「ちき」と同じもの〕まぬけ。とんま。多く人をののしっていう語。「須河の―めが待て居てね」〈当世書生気質•逍遥〉「こんな無分別な―を相手にしては吾輩の顔に係はるのみならず」〈吾輩は猫である•漱石〉』
「さ春れハ」、判読が難しい。
「神銭論」、晋の魯褒(ろぼう)の文。正しくは銭神論とありました。漢学に詳しくなく馬脚をあらわしたのか、それともわざとまちがえたのか、わたしはわざとではないかと勘ぐります。
絵と本文、両方ともに戀川春町。
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