P16後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
鉄 の如 き針 逆 尓生 ぜり豊前 吹 手の濱 尓天旅 僧
てつ ごと 者りさ可しま せう ぶぜん本つて 者満 里よ曽う
てつのごときはりさかしまにしょうぜりぶぜんほってのはまにてりょそう
王尓ゝとられしこと南 朝 咄 尓出 多るも此磯 奈での
奈んてう者゛奈し いで このい曽
わににとられしことなんちょうばなしにいでたるもこのいそなでの
こと奈るべし本 草 異考 尓巨 口 鰐 登出多るも此
本んざうゐこう きよこう可゛く いで この
ことなるべしのんぞういこうにきょこうがくといでたるもこの
磯 奈でのこと奈りといへり去 バ渡海 ホ ニハ心 を附 べき也
い曽 され と可いとう こゝろ つく
いそなでのことなりといえりさればとかいとうにはこころをつくべきなり
(大意)
鉄のような針が逆さまに生えている。豊前の国、吹手の浜で旅の僧が
わににとらわれたことが「南朝咄」にでているが、これも磯撫の
ことだろう。「本草異考」に「巨口鰐」とでているのも、この
磯撫のことであるといえる。だから渡海するときなどには気をつけるべきである。
(補足)
この話は妖怪ものではなく、海にでたときの心構えを説いているようです。実際に沢山の人が海で命を失われているのですから、だれしもうなずきながら読んだはずです。現代版のジョーズであります。「磯」と陸に接している海との境目の言葉を使っているのは、当時は沿岸での航行しか幕府が認めていなかったためであるかもしれません。
「王尓ゝとられしこと」、ひとつながりでかかれているので、切れ目を確認すると勉強になる。
「南」のくずし字は、「十」のあとそのまま右回りに筆を運びます。
「本草異考」、ここの「本」のくずし字は「大」+「十」。「草」は「単」のようなかたち。「己」+「大」は「異」の異体字。
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