P22 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
寐ぶとり
ね
ねぶとり
む可し見めう川ら可奈る
むかしみめうつらかなる
おん奈阿りし可゛袮ふれる
おんなありしが ねぶれる
時 盤その身座敷 中
とき ミざしきぢう
ときはそのみざしきじゅう
にふとりいびきのこゑ
にふとりいびきのこえ
車 能とゞろく可゛ごとし
くるま
くるまのとどろくが ごとし
これ奈ん世尓袮ぶとり
よ
これなんよにねぶとり
といふものに古そ
というものにこそ
(大意)
寝ぶとり
むかし見目麗しい
女がいたが、眠る
ときはそのからだが座敷中
に太っていっぱいになり、いびきの声が
車の轟音のようであった。
これが世にいう寝ぶとり
というものである。
(補足)
座敷にいっぱいになることをのぞけば、このような方々は性別に関係なくいらっしゃいます。今はペットでも・・・。なのでいっぱいになることをのぞいた部分を、世間にはなさそうな噺としてとりあげて「寝ぶとり」としたのでしょう。「寝いびき」では夜話になりませぬ。
「見めう川ら可」、「め」がパッとみため「あ」かと。変体仮名「川」(つ)、なんで縦三本が横長の一筆書きの「つ」になるのか?でも片仮名「ツ」は縦三本。
「時盤」、いつもは助詞「は」は変体仮名「者」(は)or片仮名「ハ」ですけど、ここでは変体仮名「盤」(は)。
「座敷」、「敷」のくずし字はよくわからないかたちですがよくでてきます。偏の「方」の上の部分だけが全体の上半分になって、「方」と「攵」(のぶん)がひとかたまりになって下半分になってます。
「いびき」、「ひ」が「き」に押されている感じ。「い」ではとおもいきや「い」に濁点はつきません。
「車能」、この変体仮名「能」(の)もよくでてきます。
「ごとし」、「こと」は合字でこれでひと文字。
「これなん」、この「なん」は辞書で調べても出てきません。「なむ」で調べます。高校の古文の授業みたい。
「古そ」、変体仮名「古」(こ)だとおもいます。
就寝中のご婦人の寝顔と上半身裸の様子が不釣り合いで着ぐるみを着ているみたい。右腕を折り曲げて頭を支えています。その指が肩越しにのぞいているのですけど、それがなんとも不気味、親指の爪まで描いています。寝所の部屋はスッキリしていてきれい。行灯や枕屏風は簡素。寝具は掻巻布団が暑苦しそう。だから裸なのか。敷布団の角にある四角い箱はなんでしょう。
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