2024年5月1日水曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その35

P11P12 国文学研究資料館蔵

P12

(読み)

「い多をけづゝ多可ん奈く春゛ハま多゛

 いたをけずったかんなくず はまだ


多起つけ尓でも奈る可゛命  を

たきつけにでもなるが いのちを


け川゛ゝ多るかん奈く川゛ハ多ゞ

けず ったるかんなくず はただ


おいしやさ満のやく多゛以と

おいしゃさまのやくだ いと


奈るのミなり

なるのみなり


「けづれ命(めい)

 けずれ  めし


春うハさま

すうはさま


\゛/尓ある

ざま にある


可゛奈可尓も王

が なかにもわ


づ可のいのち

ずかのいのち


多゛まゝの

だ ままの


川 \/

かわままのかわ


女  で命  をけづる

おんなでいのちをけずる

(大意)

「板を削った鉋屑はまだ焚き付けにでもなるが、命を削った鉋屑は、ただ、お医者様の薬代となるのみである。

「削った命の数(寿命のこと)はさまざまにあるが、中でもわずかの命だ、儘(まま)の川、ままのかわ。

(補足)

「い多を」、変体仮名「多」が上下にはさまれてつぶれてしまって、「い多」で一文字のようにみえます。

「まゝの川」、『儘の川、地唄』。命はいろいろ工夫しても長い短いはわからない、そのままにうけいれるのがよさそうだ、はかないものなのだよ。とでもいう意味か。

 こたつの奥には、盆栽風のものが二鉢あって、ひとつは果実のようなものがなっています。こたつに入る時期に実のなるものは?柑橘類でしょうか。こたつの覆いの模様はきんとん雲か。命を鉋で削るそばには曲尺もあります。火鉢もものがよさそうでその下には煙草入れ。雪見行灯のつくりも丁寧に(ちゃんと手提げまで細い黒い線で)描いています。でも、小さい雪見障子を上にあげてあるのだから、中が描いてあってもよさそうなのに、真っ白。わたしの見立てが間違っているのかも。

 とにかく、この部屋のいろいろ、京伝自身の体験から描いた感じがします。

 

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