2024年5月17日金曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その51

P20 国文学研究資料館蔵

(読み)

[命  能おや]

 いのちのおや


奈めくじハ可いるをおそれ

なめくじはかいるをおそれ


かいるハへびをおそれへびハ

かいるはへびをおそれへびは


ハ奈めくじをおそれき川年

はなめくじをおそれきつね


ハ可りうどをおそれ可りう

はかりうどをおそれかりう


どハしやうやをおそれ

どはしょうやをおそれ


志やうやハき川年をおそ

しょうやはきつねをおそ


畄のミ志らみのおや由

るのみしらみのおやゆ


びをおそれる毛ミ奈こ

びをおそれるもみなこ


連命  可゛おしきゆへ也

れいのちが おしきゆえなり


されバむやく能せ川しやうし

さればむやくのせっしょうし


ものゝ命  をとるべ可らず

もののいのちをとるべからず


「者奈し可゛め者奈しう奈

 はなしが めはなしうな


き者奈しどり奈ど命

ぎはなしどりなどいのち


のおや尓おんを可へし

のおやにおんをかえし


多る多めしお本し

たるためしおおし

(大意)

 なめくじは蛙を恐れ、蛙は蛇を恐れ、蛇はなめくじを恐れる。狐は狩人を恐れ、狩人は庄屋を恐れ、庄屋は狐を恐れる。蚤虱が親指を恐れるのも、みな命が惜しいからである。されば、無駄な殺生はすべきでないし、生きとし生けるものの命をとってはならない。

「放し亀・放し鰻・放し鳥など、命の親に恩を返すおこないの例は多い。

(補足)

 「なめくじ」の三すくみは虫拳(親指が蛙、人差し指が蛇、小指がナメクジ)。狐の三すくみは狐拳(藤八拳)。とものの本にはありました。

「奈めくじ」、ここの「く」と三行目の「く」がカタカナ「ム」のようなかたちで、さらに出だしに「ヽ」がありますが、もともと変体仮名「久」は一画目に「ゝ」のようなかたちがつきます。

 二行目から三行目に「ハ」がひとつおおい。たまにあります。

放生の噺は落語にも出てきます。

 雀は舌切雀そのまま(着物の柄も竹です)、亀は浦島太郎がのった亀、うなぎはというと、よくみると髷の上にかわいらしくのっていました。それぞれ左のたもとに「雀」「かめ」「う奈ぎ」とあります。

 

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