P20 国文学研究資料館蔵
(読み)
[命 能おや]
いのちのおや
奈めくじハ可いるをおそれ
なめくじはかいるをおそれ
かいるハへびをおそれへびハ
かいるはへびをおそれへびは
ハ奈めくじをおそれき川年
はなめくじをおそれきつね
ハ可りうどをおそれ可りう
はかりうどをおそれかりう
どハしやうやをおそれ
どはしょうやをおそれ
志やうやハき川年をおそ
しょうやはきつねをおそ
畄のミ志らみのおや由
るのみしらみのおやゆ
びをおそれる毛ミ奈こ
びをおそれるもみなこ
連命 可゛おしきゆへ也
れいのちが おしきゆえなり
されバむやく能せ川しやうし
さればむやくのせっしょうし
ものゝ命 をとるべ可らず
もののいのちをとるべからず
「者奈し可゛め者奈しう奈
はなしが めはなしうな
き者奈しどり奈ど命
ぎはなしどりなどいのち
のおや尓おんを可へし
のおやにおんをかえし
多る多めしお本し
たるためしおおし
(大意)
なめくじは蛙を恐れ、蛙は蛇を恐れ、蛇はなめくじを恐れる。狐は狩人を恐れ、狩人は庄屋を恐れ、庄屋は狐を恐れる。蚤虱が親指を恐れるのも、みな命が惜しいからである。されば、無駄な殺生はすべきでないし、生きとし生けるものの命をとってはならない。
「放し亀・放し鰻・放し鳥など、命の親に恩を返すおこないの例は多い。
(補足)
「なめくじ」の三すくみは虫拳(親指が蛙、人差し指が蛇、小指がナメクジ)。狐の三すくみは狐拳(藤八拳)。とものの本にはありました。
「奈めくじ」、ここの「く」と三行目の「く」がカタカナ「ム」のようなかたちで、さらに出だしに「ヽ」がありますが、もともと変体仮名「久」は一画目に「ゝ」のようなかたちがつきます。
二行目から三行目に「ハ」がひとつおおい。たまにあります。
放生の噺は落語にも出てきます。
雀は舌切雀そのまま(着物の柄も竹です)、亀は浦島太郎がのった亀、うなぎはというと、よくみると髷の上にかわいらしくのっていました。それぞれ左のたもとに「雀」「かめ」「う奈ぎ」とあります。
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