P13P14 国文学研究資料館蔵
P13
(読み)
道行仇(ミちゆきあ多゛)
みちゆきあだ
寝言夢(ねごと由め)能
ねごとゆめ の
浮橋(うき者し)
うきはし
あく玉 可゛奈尓ぞと人
あくだまが なにぞとひと
のとひしと起つうと
のといしときつうと
こ多へてきへ奈まじ
こたえてきえなまじ
ものおもハ春る秋
ものおもはするあき
のくれむこう
のくれむこう
とふるハ清 十 郎
とおるはせいじゅうろう
じや奈以可かさや
じゃないかかさや
さん可川半 七 と
さんかつはんしちと
いひ可王し
いいかわし
多ること能者
たることのは
もそりやか王い
もそりゃかわい
のじや奈以尓く
のじゃないにく
ふとんいまきり
ふとんいまきり
かけ多ハあ尓さん
かけたはあにさん
可あぶ奈以\/ の
かあぶないあぶないの
こと奈可らお奈可の
ことながらおなかの
やゝも者やミつき者
ややもはやみつきは
つ可阿まり尓四十 両 つ
つかあまりにしじゅうりょうつ
可ひ者多゛して二分のこる
かいはた してにぶのこる
金 より大 じ奈此 いのち
かねよりだいじなこのいのち
春て尓ゆくとハ多゛い多ん奈
すてにゆくとはだ いたんな
とん多゛ちや可゛まじや奈以可い奈
とんだ ちゃが まじゃないかいな
(大意)
(命の棒を相合い傘にして、お夏清十郎、三勝半七気取りで二人は道行きとなる)
悪玉が何ぞと人の問いしとき、通と答えて消えなまじ。物思はする秋の暮、向こう通るは清十郎じゃないか、笠屋三勝半七と、言いかわしたる言の葉も、そりゃ可愛いのじゃない、にく蒲団、今切りかけたは兄さんか、あぶないあぶないの事ながら、おなかのややも早や三月、二十日あまりに四十両、使い果たして二分残る、金より大事なこの命、捨ててゆくとは大胆な、とんだ茶釜じゃないかいな、
(補足)
道行文とよばれる独特な五七調・七五調で文章は綴られている、とありました。
道行(みちゆき)はおもに浄瑠璃や歌舞伎で男女が連れ立って駆け落ちや心中などをする場面をいう、とありました。
「あく玉可゛奈尓ぞと〜ものおもハ春る秋のくれ」は、伊勢物語六段(芥川)の歌「白玉かなにぞと人の問いしとき露と答えて消えなましものを」のもじりである、とありました。
「むこうとふるハ清十郎じや奈以可」、浄瑠璃や歌舞伎などのお夏清十郎もののきまり文句。
「かさやさん可川半七」、『笠屋三勝半七』浄瑠璃「笠屋三勝廿五年忌」などの三勝半七ものの女主人公三勝と茜屋半七の二人。
「いまきりかけ多ハあ尓さん可」、歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」七段目、兄・寺岡平右衛門に対する妹・お軽のセリフか?とありました。
「お奈可のやゝも者やミつき」、三勝半七ものの常套文句。
「者つ可阿まり尓四十両」、浄瑠璃「冥途の飛脚」のセリフ。
「とん多゛ちや可゛まじや奈以可い奈やく王んとミせて本う可ふり」、明和年間頃にはやった「とんだ茶釜が薬缶に化けた」(『半日閑話』)という流行語のもじり。
とまぁ、浄瑠璃。歌舞伎の幅広い知識がないと、さっぱりなのでありました。なので大意はそのまま書き下しただけです。
0 件のコメント:
コメントを投稿