2024年5月25日土曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その59

P23P24 国文学研究資料館蔵

P24

(読み)

ミやく可゛ござるこれを奈川゛けて者や可゛和り能ミやくと

みゃくが ござるこれをなず けてはやが わりのみゃくと


いゝま春可ぜひきにひ川かへしのミやくといふ可゛あるこれハ

いいますかぜひきにひっかえしのみゃくというが あるこれは


者りをつ奈ぎにうつていねバ奈らぬ又 ねつ可゛つよくてこの者゛ハ

はりをつなぎにうっていねばならぬまたねつが つよくてこのば は


此 まゝ多ち王可れん可多\゛/さらバ奈どとうハことをいふをつらミやくともか多志や

このままたちわかれんかた がたさらばなどとうわごとをいうをつらみゃくともかたしゃ


ぎり能

ぎりの


ミやくともいふ又 志川゛んでう川をくろミやくと毛多゛んまりのミやくともいひきびし

みゃくともいうまたしず んでうつをくろみゃくともだ んまりのみゃくともいいきびし


くう川を

くうつを


ちよん\/ ミやくといひま須

ちょんちょんみゃくといいます

(大意)

(脈がある。)これを名付けて早変わりの脈といいます。風邪をひいたときに引っ返しの脈というものがある。これは鍼(はり)を続けて打たなくてはいけない。また、熱がひどく出て、「この場はこのまま別れよう。かたがたさらば」などとうわごとをいうものを面脈(つらみゃく)とも、片しゃぎりの脈ともいう。また、沈んだように打つ脈を黒脈とも、だんまりの脈ともいい、はげしく打つ脈をちょんちょん脈といいます。

(補足)

「いゝま春」、「ま」がちょっとわかりにく。ですます調が区切りごとに何回もでてきますが、新鮮に響きます。

 脈の種類を歌舞伎の幕、これも「まく」を「みゃく」と引っ掛けている、の種類にたとえて洒落が続きます。

「者や可゛和り」、早変わりの幕。七変化物などで、同じ一つの場面で素早く姿を変え、二役以上を演じるときに用いる幕。歌舞伎を見ない人でもこれは見知っているとおもいます。

「ひ川かへしのミやく」、引き返しの幕の洒落。一度幕を引き、下座音楽や拍子木などでつないでおいて、急にまた開ける幕のことで、場面の転換をはかる。

「者りをつ奈ぎにうつて」、「つなぎ」は「 芝居や演劇で引き返し幕のとき,二つずつ続け打ちに拍子木を打ったり,音楽を演奏したりすること」で、「ひ川かへし」をうけて洒落ています。

「つらミやく」、「つらみせ」の洒落?歌舞伎の顔見世。

「か多志やぎり」、かたしゃぎり【片しゃぎり】

歌舞伎の下座の一。松羽目物や口上などの幕開き,大時代物の幕切れなどに用いる。太鼓・大鼓・小鼓・能管などを用い,太鼓を右ばちの片方で流す手法が特徴。

「くろミやく」、くろまく【黒幕】

① 黒色の幕。特に,歌舞伎で夜の場面や場面転換などのために用いるものをいう。

「だんまりの脈」だんまり【黙り】

② (「暗闘」とも書く)歌舞伎で,暗やみの中で,登場人物が無言でさぐりあいをするさまを様式化したもの。また,その場面。

「ちょんちょん脈」、道具替えをするときなど、柏木をちょんちょんと軽く打って次の幕につなげること。返し幕。

 

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