2024年4月24日水曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その28

P10 国文学研究資料館蔵

(読み)

[命  とり]

 いのちとり

 

女  ハ志 うねんのふ可起もの尓て

おんなはしゅうねんのふかきものにて


へびと奈りじやとなりし多め

へびとなりじゃとなりしため


しお本く多゛う志゛やう寺(じ)のゑん

しおおくど うじ ょう  じ のえん


ぎでもミ奈さ満ごそんじのこと

ぎでもみなさまごぞんじのこと


奈り女  の一 心 のへびめ可゛べ丹ちよく

なりおんなのいっしんのへびめが べにちょく


を奈め多ねこのやうにくれ

をなめたねこのようにくれ


奈ひの志多をべろり\゛/と

ないのしたをべろりべろりと


多゛し可けぬり多゛ん春の

だ しかけぬりだ んすの


びやう能やう奈めを

びょうのやうなめを


飛可らせと起春て多

ひからせときすてた


まるぐけのやう尓の

まるぐけのようにの


多川て男  の命  を

たっておとこのいのちを


とらんと春る

とらんとする


かる可゛ゆへ尓う

かるが ゆへにう


つくしき女  を

つくしきおんなを


本めて命  とり

ほめていのちとり


めとハ申 春奈り

めとはもうすなり

(大意)

 女は執念深きものであり、へびとなり蛇となる例が多い。道成寺縁起で、皆様ご存知のことである。思い詰めた女の蛇めが紅猪口をなめた猫のように、紅(くれない)の舌をべろりべろりと出しかけ、塗り簞笥の鋲のような眼を光らせ、ときほどいた帯締めのようにのたって、男の命をとろうとする。そのようなわけで、美しい女をほめて、「命取り女(め、眼)」と申すのである。

(補足)

「べ丹ちよく」、『べにちょく【紅猪口】

紅を入れた杯のような入れ物。指先で溶いて唇に塗る。べにちょこ』

「まるぐけ」、『まるぐけ【丸絎け】

芯(しん)を入れて,断面が丸くなるように絎けること。また,そのひもや帯。特に,帯締め』

「かる可゛ゆへ尓」、『かるがゆえに ―ゆゑ―(接続)〔「かあるがゆえに」の転〕

それゆえに。そういうわけで。「硫黄といふ物みちみてり。―硫黄が島とも名付けたり」〈平家物語•2〉』

「女の一心のへび〜男の命をとらんと春る」、まるぐけ(帯留め)をのたうつ蛇に見立てているのに、しびれました。

 上の画像では、泣く女を見上げる男の両目がいたずら書きされてますが、実際はこちら。

 京伝、いかにも命を取られそうな男の顔にしたか!?

 

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