P9 国文学研究資料館蔵
(読み)
命 可゛てあしに可らむ
いのちが てあしにからむ
「王し可゛て以志由ハ
わしが ていしゅは
水 く王しうりで
みずが しうりで
こ可゛奈し\/ といつ
こが なしこがなしといっ
てうりあるき
てうりあるき
とふ\/子可゛奈く
とうとうこが なく
て王し可゛この
てわしが この
さ満尓奈りまし多
さまになりました
「命 とつり可゛へ尓せねハ
いのちとつりが えにせねば
可ねもち尓ハ奈られ
かねもちにはなられ
ぬ多とへ命 尓可へて
ぬたとえいのちにかえて
も多ゞ本しいものハ
もただほしいものは
可年多゛の大 可゛ら
かねだ のおおが ら
くり多
くりだ
(大意)
[金が手足にからむ]
「わしの亭主は水菓子売りで、こがなしこがなしといって売り歩き、とうとう子がなくて、わしがこのような様になりました。
「命と取り替えにしなければ、金持ちにはなられぬ。たとえ命にかえても、ただ欲しいものは、金田の大からくりだ。
(補足)
「こ可゛奈し」、『こが‐なし【空閑梨・古河梨】
〘名〙 ナシの歴史上の品種。現在では、大古河(おおこが)という品種が知られ、九月中旬に熟し、大果で帯緑黄赤色、果肉は色が白く緻密で柔軟。
俳諧・犬子集(1633)二「ちればわが身をこがなしの花々哉〈貞継〉」』
「可年多゛の大可゛らくり」、『竹田人形は古い歴史を持ち、寛分年間(1660年頃)に竹田近江掾が大阪の道頓堀に人形芝居の櫓を上げたのが始まりといわれています。この竹田人形は、糸繰りとカラクリ人形として評判をとり、いつも大入り満員を続けた民衆的な人形芝居でした』とあり、金田と洒落ている。
ばあさまの手足にからむ命のしっぽがちと怖い。
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