P6 国文学研究資料館蔵
(読み)
「命 を可へ春
いのちをかえす
者んごん可う御
はんごんこうご
用 奈ら此 あい多゛
ようならこのあいだ
そりやそこで
そりゃそこで
もいのち可゛
もいのちが
おしいとお川
おしいとおっ
しやるあそ
しゃるあそ
こても命 可゛
こでもいのちが
おしいとお川
おしいとおっ
しやるこりや
しゃるこりゃ
やつこう可\/
やっこうかうか
していのちを
していのちを
本゛う尓ふる奈
ぼ うにふるな
「者いやい
はいやい
さやうで
さようで
こざい
ござい
「いのち
いのち
の可満
のかま
尓ハ
には
心 のお
こころのお
もり
もり
あり
あり
「きどあ以らくといふや川可゛かさ
きどあいらくというやつが かさ
奈るといのちをあぶなく春る
なるといのちをあぶあくする
どうぐ
どうぐ
なり
なり
命 を本゛う尓ふる
いのちをぼ うにふる
命 ハあやういもの
いのちはあやういもの
(大意)
「命を返して見せる反魂香、お求めならばこの(居合抜きの)あいだに、そりゃそこでも命が惜しいとおっしゃる。あそこでも命が惜しいとおっしゃる。こりゃ、奴(やっこ)、うかうかして、命を棒にふるな。
「はいやい、さようでござい。
命の鎌には心のおもりがある。喜怒哀楽というやつが重なると、これらはくずれやすくなって命を危なくする道具となる。
命を棒にふる。
命はあやういもの。
(補足)
このあたりの文章は、前後がつながっている部分が多く、やや判読しにくい。
「者んごん可う」、『はんごんこう ―かう【反魂香】
〔漢の武帝が李夫人の死後この香をたいてその面影を見たという故事から〕
火にくべると,煙の中に死者のありし日の俤(おもかげ)を見せるという香』。
看板に「返魂香」とあり、香炉の絵に煙が立ち上っています。その脇に「李夫人?方」。
当時、松井源水が大道芸居合抜きで見物人を集め、そこで反魂丹(はんごんたん)という食傷や撹乱に効く丸薬を売った。これに引っ掛けてのはなしとありました。
「こりややつこう可\/して」、「やつこ」が「奴(やっこ)」とわかって、区切りがわかりました。
鎌は大道芸の道具のひとつ。心のおもりが付いています。
命を、喜怒哀楽の台を重ねてたうえに不安定な足駄をはき、一瞬の技である居合抜きの刀の代わりに命の棒をもたせている様子にたとえているのがなるほどとうなってしまう。そして、命はあやういものとしゃれる。
命を棒にふる、これも文字通りのしゃれでうまい!
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