P10 国文学研究資料館蔵
(読み)
「春可ぬことをハ
すかぬことをば
い王志やん春い可尓奈可゛
いわしゃんすいかになが
れのミしやとてもこゝろ
れのみじゃとてもこころ
にふ多川ハ奈い王い奈と
にふたつはないわいなと
ふるへごゑ尓奈川天本ろ\/
ふるえごえになってほろほろ
とひざのうへゝこ本゛し多る
とひざのうえへこぼ したる
奈ミ多゛ハあ多可もへびの多満ご能ごとしそこでつひ尓ハ
なみだ はあたかもへびのたまごのごとしそこでついには
男 能命 をとりお和んぬ奈ん本゛う可おそろしき物語(もの可多り)尓て候
おとこのいのちをとりおわんぬなんぼ うかおそろしき ものがたり にてそうろう
(大意)
「『いやなことを言わないでくださいませ。いくらこんな身であっても、あなたはかけがえのないひとよ』と震え声になって、ほろほろと膝の上にこぼした涙は、まるで蛇の卵のようである。そこでとうとう男の命をとってしまうのである。とても恐ろしいことでございます。
(補足)
「お和んぬ」、『おわん◦ぬ をはん― 【畢んぬ】(連語)〔動詞「おわる」の連用形に完了の助動詞「ぬ」の付いた「おわりぬ」の転〕多く動詞の連用形に付いて,動作の完了したことを表す。…し終わった。…してしまった。「省略せしめ候ひ―◦ぬ」〈平家物語•11〉〔漢文の「畢」「了」「訖」などの訓読に基づく語〕』
「奈ん本゛う可おそろしき物語(もの可多り)尓て候」、謡曲「道成寺」などや、御伽草子にもよくみえる、物語の最後につける常套文句、とありました。
「本ろ\/とひざのうへゝこ本゛し多る奈ミ多゛ハあ多可もへびの多満ご能ごとし」、ここもなかなかに痺れる文句にて候。
三枚蒲団に上等な掛け布団、すべて旦那の出費で、床入前の大事な儀式です。
蛇の柄といい、掛け布団の柄といい、こんな細かい彫りをよくもまぁ。
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