P26前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
以ハつゞくこと能 ハ須゛し天時 行 ハ者や見うし奈ひ
あ多 ときゆき ミ
いはつづくことあたわず してときゆきははやみうしない
残 る八 郎 を免可゛け天き多奈し可へせと聲 可ける
のこ 者ちらう こゑ
のこりうはちろうをめがけてきたなしかえせとこえかける
尓逃 多川足 の止 らバこ楚ましくらん尓走 れる
尓げ あし と満 者し
ににげたつあしのとまらばこそましくらんにはしれる
阿と与り残 んの麁矢を切 て者奈天バ阿や満多
のこ 曽や きり
あとよりのこんのそやをきりてはなてばあやまた
天゛戸根可゛阿げ巻 の阿多りをのぶ可尓射て矢
と袮 まき ゐ
で とねが あげまきのあたりをのぶかにいてや
(大意)
(船田の軍)勢は追いつくことができず、時行をすでに見失っていた。
残る八郎めがけて「ひきょうもの。引き返せ」と声をかけた
が、逃げ立つ足が止まるわけがない。まっしぐらに走っている
(八郎の)うしろから、(船田の軍勢が)残りの(征矢(そや))矢をはなてば、ねらいどおりに
戸根(の八郎)の揚巻(鎧の房)のあたりを深く射抜き、
(補足)
「こと」、合字。
「残」のくずし字の旁部分「戔」は「お」のようなかたち。2行後にもあります。
「逃多川足の止らバこ楚」、変体仮名「川」(つ)。平仮名「こ」が読めませんがながれから判断。
「ましくら」、現在では「まっしぐら」。
「麁矢」、これは辞書にありませんでしたが「征矢」(そや)のことでしょう。矢の先に矢じりをつけて殺傷能力を高めたもの。
「あげ巻」(揚巻)、鎧の後ろ側にある房のようなもの。
「のぶか」(篦深)、射た矢が深く突き刺さるさま。
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