2021年11月7日日曜日

桃山人夜話巻二 その41

P26前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

以ハつゞくこと能 ハ須゛し天時 行 ハ者や見うし奈ひ

            あ多     ときゆき   ミ

いはつづくことあたわず してときゆきははやみうしない


残 る八 郎 を免可゛け天き多奈し可へせと聲 可ける

のこ 者ちらう              こゑ

のこりうはちろうをめがけてきたなしかえせとこえかける


尓逃 多川足 の止 らバこ楚ましくらん尓走 れる

 尓げ  あし と満          者し

ににげたつあしのとまらばこそましくらんにはしれる


阿と与り残 んの麁矢を切 て者奈天バ阿や満多

    のこ  曽や きり

あとよりのこんのそやをきりてはなてばあやまた


天゛戸根可゛阿げ巻 の阿多りをのぶ可尓射て矢

  と袮    まき         ゐ

で とねが あげまきのあたりをのぶかにいてや


(大意)

(船田の軍)勢は追いつくことができず、時行をすでに見失っていた。

残る八郎めがけて「ひきょうもの。引き返せ」と声をかけた

が、逃げ立つ足が止まるわけがない。まっしぐらに走っている

(八郎の)うしろから、(船田の軍勢が)残りの(征矢(そや))矢をはなてば、ねらいどおりに

戸根(の八郎)の揚巻(鎧の房)のあたりを深く射抜き、


(補足)

「こと」、合字。

「残」のくずし字の旁部分「戔」は「お」のようなかたち。2行後にもあります。

「逃多川足の止らバこ楚」、変体仮名「川」(つ)。平仮名「こ」が読めませんがながれから判断。

「ましくら」、現在では「まっしぐら」。

「麁矢」、これは辞書にありませんでしたが「征矢」(そや)のことでしょう。矢の先に矢じりをつけて殺傷能力を高めたもの。

「あげ巻」(揚巻)、鎧の後ろ側にある房のようなもの。

「のぶか」(篦深)、射た矢が深く突き刺さるさま。

 

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