2021年11月11日木曜日

桃山人夜話巻三 その2

P1後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

女 有 天ひ曽可尓安成  登毛のいひて个れ登゛も親

ぢよあり     や春奈り           於や

じょありてひそかにやすなりとものいいてけれど もおや


なん互   尓ゆるさゞ里个れバ夫 婦の可多らひも奈し

  多可゛ひ         ふう    

なんたが いにゆるさざりければふうふのかたらいもなし


可゛多く人 目越忍 び天ハ夜ハ尓野辺尓出 つゝ契

    ひとめ 志の   よ  のべ いで  ちぎり    

が たくひとめをしのびてはよはにのべにいでつつちぎり


(大意)

(美)女がいて、ひそかに情を通じていたが、互いの親

が許さなかったので夫婦の情交もなし

がたく、人目を忍んでは夜になると野辺に出て契(りを)


(補足)

「ひ曽可尓」、「ひ」が大きいためか、つぎの文字が悩みます。

「毛のいひて」、「物言う」は「男女が情を通じる」という意味もありました。「もの」という組み合わせではこのかたちの変体仮名「毛」が使われていることが多いです。

「親なん互い尓」、この「なん」は文法的には係助詞になるのでしょうか。「この北山に,限りなく響きのぼる物の音―聞こゆる」〈宇津保物語•俊蔭〉

「ゆるさゞ里个れバ」、一語一語の区切りを確認するのによい練習問題。

「可多らひも」、「語らう」は現在でも日常使われていますが、「③ 親しく交際する。懇意にする。「早く親の―・ひし大徳」〈源氏物語•玉鬘〉④ 特に,男女が言い交わす。契る。」という意味もあり、なんとも奥ゆかしい物言いであります。「ら」がかたちをなしていませんがながれで読めます。

「野辺」、「野」のくずし字は特徴的。


 

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