P1後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
女 有 天ひ曽可尓安成 登毛のいひて个れ登゛も親
ぢよあり や春奈り 於や
じょありてひそかにやすなりとものいいてけれど もおや
なん互 尓ゆるさゞ里个れバ夫 婦の可多らひも奈し
多可゛ひ ふう
なんたが いにゆるさざりければふうふのかたらいもなし
可゛多く人 目越忍 び天ハ夜ハ尓野辺尓出 つゝ契
ひとめ 志の よ のべ いで ちぎり
が たくひとめをしのびてはよはにのべにいでつつちぎり
(大意)
(美)女がいて、ひそかに情を通じていたが、互いの親
が許さなかったので夫婦の情交もなし
がたく、人目を忍んでは夜になると野辺に出て契(りを)
(補足)
「ひ曽可尓」、「ひ」が大きいためか、つぎの文字が悩みます。
「毛のいひて」、「物言う」は「男女が情を通じる」という意味もありました。「もの」という組み合わせではこのかたちの変体仮名「毛」が使われていることが多いです。
「親なん互い尓」、この「なん」は文法的には係助詞になるのでしょうか。「この北山に,限りなく響きのぼる物の音―聞こゆる」〈宇津保物語•俊蔭〉
「ゆるさゞ里个れバ」、一語一語の区切りを確認するのによい練習問題。
「可多らひも」、「語らう」は現在でも日常使われていますが、「③ 親しく交際する。懇意にする。「早く親の―・ひし大徳」〈源氏物語•玉鬘〉④ 特に,男女が言い交わす。契る。」という意味もあり、なんとも奥ゆかしい物言いであります。「ら」がかたちをなしていませんがながれで読めます。
「野辺」、「野」のくずし字は特徴的。
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