2021年11月20日土曜日

桃山人夜話巻三 その11

P6前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

个る可゛誰  志る登ハ奈し尓此 塚 を畜 生  塚 といひ

         多゛れ       このつ可 ちくせ うづ可

けるが だ れしるとはなしにこのつかをちくしょうづかといい


奈らハし天今 尓草 香山 の谷 可げ尓此 跡 のこり

     いま くさ可やま 多尓   このあと

ならわしていまにくさかやまのたにかげにこのあとのこり


天有 しと奈ん毛路こし尓も是 尓似多ること有

 あり          これ 尓    あり

てありしとなんもろこしにもこれににたることあり


畜 類 といへども己 れ可゛徒多奈き尓恥 天ミづ可ら

ちくる以     をの        者ぢ

ちくるいといえどもおのれが つたなきにはじてみずから


死し多ることいと哀  奈り人 間  の心  奈き毛の尓く

し       阿ハれ  尓ん个゛ん こゝろ  

ししたることいとあハれなりにんげ んのこころなきものにく


(大意)

しかし、誰知るとはなしにこの塚を「畜生塚」という

ようになり、今も草香山の谷かげにこの跡が残って

いるという。唐土にもこれに似た話がある。

畜類とはいえ己のつたなさを恥じてみずから

命を絶ったことはたいそう哀れなことである。人間の分別のないものに

(補足)

「毛路こし尓も」、外国にもという意の定番の言葉。

「徒多奈き」、「つ」は最初、変体仮名「津」(つ)にしていたのですが、再度調べて変体仮名「徒」(つ)のほうにしました。「津」は縦棒がまっすぐに下にのびるのですが、ここのは中ほどで右にながれています。

「いと」、ここの「い」は右隣の「い(へども)」のより大きいです。大きな声で読んだり、意味を強調したいときには字を大きくするような気がします。

振り仮名「阿ハれ」、「ハ」が変体仮名「和」(わ)にもみえますが、さて・・・

 

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