2021年11月17日水曜日

桃山人夜話巻三 その8

P4後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

人 尓志られぬ者可里こと越奈し可ハらぬ契  あれ

ひと                 ちぎり

ひとにしられぬはかりごとをなしかわらぬちぎりあれ


よ可しかゝることも他生  のやく曽くごと奈るべけれ

         多せ う

よかしかかることもたしょうのやくそくごとなるべけれ


者゛王れ尓おゐ天つ由悔 ること奈可るべし登止 め

          く由         とゞ

ば われにおいてつゆくゆることなかるばしととどめ


个れどもき可須゛し天身を退   可んとして子越

          ミ 志り曽゛ 

けれどもきかず してみを知りぞ かんとしてこを


志多ひ夫  越志多ふの情  実 尓ミる尓志のび可゛多

   於つと     せ うじつ

したいおっとをしたうのじょうじつにみるにしのびが た


(大意)

人に知られぬよう手段をこうじて、今までどおりの(夫婦の)関係をつづけ

ればよいではないか。このようなことも前世からの縁であることにちがいない

のだから、わたしとってはまったく悔いることはないのだ」と止めた

のだけれども聞かずに身を引こうとした。子を

おもい夫を慕う情はじつにみるに忍び難かったが


(補足)

「人尓志られぬ者可里こと越奈し」、「ら」はかたちをなしてなく、もはやつなぎの役目。「者可里こと」、「者可里」が最初は何だろうとおもいましたが、意味がわかると納得。

「可ハらぬ契あれよ可し」、「可」は「う」にも「ら」にもにているので混乱します。ここでも「ら」はつなぎ役。「あれよ可し」の意味が悩みました。

「かゝることも」、「ゝ」がちょっと変体仮名「多」にもみえます。3行あとの「志多ふ」の「多」ににてます。

「やく曽くごと」、「く」がつづきますが「や」の次の「く」が迷いました。

「つ由悔ること」、「つ由」をつま(妻)と読み間違えてしまいました。「悔」の振り仮名「く由」の「由」と「つ由」の「由」が同じなので気づいた次第。お恥ずかしい・・・

「夫越志多ふの情実尓ミる尓」、初心者なので「情実」とつなげて読んでおかしいことにしばらくたってから気づきました。これまたお恥ずかしい・・・

 この後半5行は読み間違いがたくさんあって、わたしにとっては難しい箇所でありました。そのようなときは繰り返しくりかえし音読するに限ります。

 安成、声がうわずりあえぐように野狐なる妻を翻意させようと死にものぐるいの様子。からだは震え、妻に向かう手はわななき空をさまよう。安成自身のほうがよほど恐ろしい形相の化け物になってきてしまいました。

 

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