2021年11月12日金曜日

桃山人夜話巻三 その3

P2前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

个る可゛楚こ尓一 ツの淫 狐阿り天是 越うらや満しく

       ひと  ゐんこ   これ

けるが そこにひとつのいんこありてこれをうらやましく


や思 ひ个ん彼の美女 登化  天夜ごと安 成 と野

      可 びぢよ 者゛け よ  や春名り や

やおもいけんかのびじょとば けてよごとやすなりとや


外  尓交  里遂 尓懐  妊 し个れバやむこと越得須゛し

ぐ王以 まじハ つい くわ以尓ん         え

が いにまじわりついにか いにんしければやむことをえず し


天此 女  越免とれり十月 を経天玉 のごときお

 このをん奈     とつき へ 多満

てこのおんなをめとれりとつきをへてたまのごときお


のこ子越うミ名越安代 と呼 个り常 尓妻 の

  ご   奈 や春よ よび  つ年 つま

のこごをうみなをやすよとよびけりつねにつまの


(大意)

(契りを)交わしていた。と、そこに一匹のいかがわしい狐がいて、その様子を

うらやましくおもっていた。かの美女に化けて夜ごと安成と野外で

交わりを重ね、ついに妊娠したのでやむを得ず

この女をめとった。十月をへて玉のような

男の子が生まれ、名を安代と名付けた。妻が常に


(補足)

「楚こ尓」、たいていは変体仮名「曽」(そ)ですが、ここでは文末に「〜楚゛」として使われる変体仮名「楚」(そ)。

「うらや満しく」、何度か目を上下してから、読めました。

「思」のくずし字は平仮名「と」ににています。

「夜ごと」、「ごと」は合字「こと」に「゛」。次の行とその次の行にも出てきます。

「安成」、前頁では「成」が楷書でした。この頁ではくずし字の「成」になってます。「求」or「斗」のようなかたち。

「野外」「野狐」、「野」のくずし字は「那」+「王」のようなかたち。

「常」のくずし字は特徴的。

 

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