2021年11月23日火曜日

桃山人夜話巻三 その14

P8 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

芝  右衛門狸

し者゛ゑもん多ぬき

しば えもんたぬき


淡 路 国 尓芝  右衛門といへる

あ王ぢのく尓 し者゛ゑもん

あわじのくににしば えもんといえる


古 狸   あり竹 田 出 雲

ふる多゛ぬき  多け多゛いづ毛

ふるだ ぬきありたけだ いずも


芝  居興 行

し者゛いこうぎ う

しば いこうぎょう


せし折 可ら

  おり

せしおりから


見 物 尓来

个んぶつ き多

けんぶつにきた


里て犬 尓

  いぬ

りていぬに


食ハれ死

く  しし

くわれしし


多り然 れ

  し可

たりしかれ


共 廿三日可゛

ども

どもにじゅうさんにちが


間   者姿   を

あい多゛ 春可゛多

あいだ はすが たを


あらハさゞ

あらはさざ


里しと

りしと


那り

なり


(大意)

芝右衛門狸

淡路の国に芝右衛門という古狸がいた。

竹田出雲の(人形)芝居が興行されているときに

見物に来て犬に食われて死んでしまった。

しかし(死後)二十三日間は正体を

あらわさなかったという。


(補足)

 ページ割の関係で画が先になっています。不鮮明なところも多く読みが間違っているかもしれません。

 野犬の群れに襲われ、脛をかまれ尻肉にかぶりつかれ逃げまどう芝右衛門たぬき。よくみると(みなくても)芝右衛門の尻の下あたりから恐怖で隠しきれなくなったのか、尻尾が出てきてしまいました。

「竹田出雲」、振り仮名「い」の一画目が薄く短いので「つ」にみえます。変体仮名「毛」は「毛の」の組み合わせで使われるかたち。

「死」、振り仮名が長い「し」にみえますが、「しし」でしょう。

「然れ」、振り仮名「し」が、先の「死」の振り仮名「し」とほとんど同じですが、こちらは「し」ひとつ。

「廿三日」、はてこれは?となやんで、漢数字と日が付き、「十」がふたつで「十十」なので「廿」。

「間者」、助詞の「は」はたいていは「ハ」ですが、ここでは珍しく変体仮名「者」(は)です。いっけん「を」にみえますが、二文字したにある「を」と比べるとことなってます。

「あらハさゞ」、「あ」と「ハ」はわかりますが、他の三文字が悩むところ。

「那り」、「な」には変体仮名「那」(な)もあります。たびたび出てきます。

 

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