P9前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
第 二十 芝 右エ門狸
多゛以尓志う志者゛ゑもん多ぬき
だいにじゅうしば えもんたぬき
昔 淡 路尓芝 右エ門登いへる農 家有 曽れ可゛走 尓
む可し阿王ぢ 志者゛ゑもん のう可阿り 者しり
むかしあわじにしば えもんといえるのうかありそれが はしりに
古 き狸 の折 ふし来 り天残 食 をもとめり芝 右エ門も
ふる 多ぬき をり き多 ざんしよく 志者゛ゑもん
ふるきたぬきのおりふしきたりてざんしょくをもとめりしば えもんも
哀 尓思 ひて日 夜尓食 越与 へて个る可゛阿る時 興 尓
阿王れ 於も 尓ちや 志よく 阿多 とき个 う
あわれにおもいてにちやにしょくをあたえてけるが あるとききょうに
入り天芝 右エ門狸 尓む可ひ天いひ个るハ汝 藝 阿ら
い 志者゛ゑもん多ぬき 奈んじ个゛い
いりてしば えもんたぬきにむかいていいけるはなんじげ いあら
(大意)
第二十芝右エ門狸
昔、淡路の国に芝右エ門という農家があった。そこの台所に
歳をとった狸が時折やってきては残飯を求めた。芝右エ門も
気の毒におもい日夜、食べものを与えていたが、あるとき面白
がって、芝右エ門たぬきにむかって「おまえに芸がある(ならば)
(補足)
画のときは芝右衛門でしたが本文では芝右エ門。
「走」(者しり)、台所の流しのこと。
「残」の下部分がかすれてしまっているので「灬」のようにみえてしまいます。
「もとめり」、「も」が縦長の「α」にみえますが、筆の運びは真下までいって左回りに斜め上にすすみ今度は右回りに右斜した方向にといった感じ。このあと4行目の「毛の可゛多り」の「毛」はもう一つの変体仮名。
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