P3前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
妻 の安 成 尓いひ个るハわ連ハ草 香山 のあ奈多ニ
つま や春奈り くさ可やま
つまのやすなりにいいけるはわれはくさかやまのあなたに
年 久 しく春免る狐 奈り君 可゛女 と通 じ多満ひし
としひさ きつ袮 きミ をん奈 つう
としひさしくすめるきつねなりきみが おんなとつうじたまいし
越ふと浦 山 しく思 ひ天何ハ連人 間 と交 りし天
うらや満 於も 尓ん个゛ん まじハ
をふとうらやましくおもいてあわれにんげ んとあじわりして
ミ者゛や登彼の女 越退 け君 越多者゛可里参 ら
可 をん奈 志り曽゛ きミ まい
みば やとかのおんなをしりぞ けきみをたば かりまいら
春ること定 免天尓くしとも思 し多満ふべ个れども
さ多゛ 於本゛
することさだ めてにくしともおぼ したまふべけれども
(大意)
妻が康成に言うには「わたしは草香山のむこうに
長年住んでいる狐です。あなたが女の人とひそかに交わってらっしゃるのを
見て、ふとうらやましくなり、こころひかれてしまいました。人間と交わって
みたいと、あの女の人をしりぞけてしまいました。あなたをだましてしまい、きっと憎いとお思いでらっしゃるでしょうけれども
(補足)
草香山の野狐がとつとつと語り始めます。ここは講談ではなく歌舞伎の一場面、三味線が物悲しく心のふるえを伝えてきます。
「わ連ハ」、「わ」がカタカナの「ワ」のようにもみえます。左側の線がやや太いのでやはり変体仮名「和」(わ)のような気がします。
「あ奈多ニ」、「あっち、向こうの方」。
「久しく」、「く」は上が太くなってますので変体仮名「久」でしょうか。すぐ左の行の「浦山 しく」の「く」は平仮名。「裏山」にかけて当て字で「うらやま(しく)」。
「通じ多満ひし」、「じ」と「多」が一文字のようになってます。「ひし」はよくある「し」のかきかた。
「人間」、「間」のくずし字は「門」が冠になってます。
「多者゛可里参ら春ること」、一字一字確認するよい練習問題です。「こと」は合字なのでひと文字。
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