2021年11月14日日曜日

桃山人夜話巻三 その5

P3前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

妻 の安 成 尓いひ个るハわ連ハ草 香山 のあ奈多ニ

つま や春奈り         くさ可やま

つまのやすなりにいいけるはわれはくさかやまのあなたに


年 久 しく春免る狐  奈り君 可゛女  と通 じ多満ひし

としひさ     きつ袮  きミ  をん奈 つう

としひさしくすめるきつねなりきみが おんなとつうじたまいし


越ふと浦 山 しく思 ひ天何ハ連人 間  と交  りし天

   うらや満  於も     尓ん个゛ん まじハ

をふとうらやましくおもいてあわれにんげ んとあじわりして


ミ者゛や登彼の女  越退   け君 越多者゛可里参 ら

     可 をん奈 志り曽゛ きミ      まい

みば やとかのおんなをしりぞ けきみをたば かりまいら


春ること定  免天尓くしとも思  し多満ふべ个れども

    さ多゛       於本゛ 

することさだ めてにくしともおぼ したまふべけれども


(大意)

妻が康成に言うには「わたしは草香山のむこうに

長年住んでいる狐です。あなたが女の人とひそかに交わってらっしゃるのを

見て、ふとうらやましくなり、こころひかれてしまいました。人間と交わって

みたいと、あの女の人をしりぞけてしまいました。あなたをだましてしまい、きっと憎いとお思いでらっしゃるでしょうけれども

(補足)

 草香山の野狐がとつとつと語り始めます。ここは講談ではなく歌舞伎の一場面、三味線が物悲しく心のふるえを伝えてきます。

「わ連ハ」、「わ」がカタカナの「ワ」のようにもみえます。左側の線がやや太いのでやはり変体仮名「和」(わ)のような気がします。

「あ奈多ニ」、「あっち、向こうの方」。

「久しく」、「く」は上が太くなってますので変体仮名「久」でしょうか。すぐ左の行の「浦山 しく」の「く」は平仮名。「裏山」にかけて当て字で「うらやま(しく)」。

「通じ多満ひし」、「じ」と「多」が一文字のようになってます。「ひし」はよくある「し」のかきかた。

「人間」、「間」のくずし字は「門」が冠になってます。

「多者゛可里参ら春ること」、一字一字確認するよい練習問題です。「こと」は合字なのでひと文字。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿